小学校の英語、これから

2017年10月13日 投稿者:執行 智子

 小学校高学年に外国語活動が導入されて早5年、そして2020年からは高学年において「外国語」が正式に教科として小学校に登場します。先生にとって未知の「小学校の外国語」と奮闘していることと思います。私も「小学校の外国語」と関わり十数年がたちます。十数年前は世界地図も、英語の絵本も、英語のフラッシュカードもない小学校がほとんどでした。小学校に行く時は教具をキャリアバックに詰め込み、ガラガラと引きながら歩いて行きました。大学に戻ると学生から「どこに行かれるんですか」と尋ねられ、「ハワイです」と冗談を言うほどの荷物の多さでした。最近ではどちらの小学校を訪問しても、先生自身が外国語活動に積極的に関わる姿を拝見でき、誇らしさと年月の重さを感じています。

 さて、高学年に「外国語」、中学年に「外国語活動」が導入されますと校内のほとんどの先生が英語の指導に関わることになります。英語が専門でない小学校の先生にはとても負担になることと思いますが、担任であることを生かして、中学校・高等学校ではできない「英語」の授業ができると私は思っています。

 外国語学習にとって欠くことのできないものは、適切で豊富な英語のインプットです。母語を獲得する時、赤ちゃんはおなかの中でお母さんのたくさんの母語の語りかけを聞き、生まれるとお父さん、おじいさん、おばあさんなど回りの人たちから多くの語りかけを聞きながら母語に親しんでいきます。2歳位までは、一言もことばを話さずじっと聞いている子もいますね。外国語習得も同じようになされるべきであると多くの研究者が言っています。適切で豊富なインプットに触れることが、外国語習得においてもとても大切なのです。「一つ教えたら一つ言える」わけではないのです。

 英語の絵本の読み聞かせは、インプットとして有効な手段です。子どもが絵を見て、それと既知情報(概念)を結びつけて意味を推測しながら、同時に音声で聞くことで、ことば(音声)の意味を理解することができようになります。この時、断定的な訳や意味を日本語で与えてしまうと、聞き手である子どもが混乱してしまう場合があります。というのは、一人ひとりの頭の中にある経験や環境から作り上げたられた概念は、全ての人において全く同じではないからです。

 小学校の担任の先生は、児童一人ひとりの頭の中のこと(概念)をよく分っているので、英語の絵本の読み聞かせをしながら、各々にどのような語りかけをすれば理解ができるかなど、日本語で意味を教えるのではない上手なフォローアップができるのではないでしょうか。現在では、英語の絵本に読み上げのCDがついているものが多くあります。これらを上手に活用することで、特上のインプットができることと思っています。

 英語に恐れることなく、英語と仲良くしていきましょう。

 

shigyo_tomoko
執行 智子(Tomoko Shigyo)

プロフィール

専門:第二言語習得・初等英語教育
略歴:津田塾大学文学研究科後期博士課程単位取得満期退学。外国語活動コーディネーター、小学校教員研修講師などを経て現職。小学生から大学生までの英語学習を概観、初等英語指導者に必要なことを研究。

子どもと物語

2017年9月29日 投稿者:佐々木 由美子

 子どもたちは絵本や紙芝居など、お話が大好きですが、保育の中に取り入れられるようになったのは、いつくらいからだと思いますか? 実は、1876(明治9)年、日本で最初の幼稚園とされる東京女子師範学校附属幼稚園(現在のお茶の水女子大学附属幼稚園)が設立された当初から、保育項目の中にお話(当時の呼び方だと「説話」)は存在していたのです。明治9年といえば、まだ創作の児童文学も誕生していません。もちろん、絵本や紙芝居もない時代です。当時の資料を見ると、保育者は「兎と亀」「賢いカラス」などのイソップ寓話や「ワシントン伝」などのお話を覚えて、子どもたちに語っていたのがわかります。なぜ、日本の昔話ではなく、イソップのお話だったのでしょう。それは、当時、幼児教育のお手本が国内になく、参考にしていたのが、海外の翻訳書だったからです。その後、明治30年代になると、「桃太郎」「舌切り雀」「浦島太郎」など日本の昔話や創作の物語も、保育の中で語られるようになっています。現代のように幼い子どものための物語が豊富にあったわけではない時代、保育者は苦心して子どもたちが喜ぶお話を探して語っていたのです。

 さて、現代ではスマートフォンのアプリでも絵本の読み聞かせをしてくれます。とても便利な世の中になりました。でも、アプリの読み聞かせは、母親や大好きな先生が読んでくれる体験とは質的に異なるものだと思います。語り手の身体を通って発せられる音声としての言葉は、息遣いや表情、ぬくもりをもった生きた言葉です。語り手のあたたかな想いや愛情がたくさん込められています。録音された音声や機械音とは違います。子どもたちは、大好きな人と空間と時間と物語の楽しさを共有しながら、自分が愛され、大切にされていることを感じとります。大人にとっても、子どもにとっても幸せな時間です。

 幼児教育の父・倉橋惣三は、お話のことを次のように述べています。「『お話』が幼児の為に如何に幸福なる世界であり教育上如何に貴重なる材料であるかは、更めて説くまでもない。之れは古く古くから世界のあらゆる国に於て行はれて来た、最も自然的にして最も普遍的なる最古の幼児教育法の一つである」と。物語を介して子どもとじっくりと向かい合う時間を大切にしていきたいものです。

 

sasaki_yumiko
佐々木 由美子(Yumiko Sasaki)

プロフィール

専門:児童文化・文学、幼児教育
略歴:白百合女子大学大学院児童文学専攻博士課程満期退学。鶴川女子短期大学講師、准教授を経て現職。絵本や紙芝居を中心に、子どもの育ちと文化について研究している。

自分にとっての専門性

2017年8月4日 投稿者:近藤 俊明

 自分が人生において何をやりたいか, 考え始めたのは高校生の頃だと思います。世界は広く, 人生には自分の知らない深いものがあり, それらを是非知りたいと思っていました。
その頃,将来は小説家になりたいと思い, トルストイや夏目漱石などを好んで読みました。そして卒業後, 東京にある大学のロシア文学科に進みました。
 しかし, 学生運動の盛んな頃でもあり(文学部自治会室で, 学生のリンチ殺人事件などもありました), 大学の勉強にはあまり真剣になれず, 3年生になる時は留年しました。当時は東西の冷戦時代であり, ロシア文学を学ぶ者として,東のリーダーであったソ連(現ロシア)を自分の目で見てみたいと思いました。
 一年間皿洗いをして資金を作り, 3月, ナホトカからシベリア鉄道に乗ってウラル山脈を超え, モスクワ, レニングラード, そして, キエフまで行きました。社会主義の統制下ではありましたが, 一月弱の一人旅でロシア人達の個人としての純朴さに触れました。
 大学の3年目からは, しかし, 哲学を専攻しました。当時盛んであった実存主義(その頃の哲学の中心は実存主義とマルクス主義)を学びたかったからです。 卒論は, キエルヶゴール全集を全て読んで書き上げました。B評価でした(笑)。しかし, それ以後, 彼の真に深く考え誠実に生きる人間の姿は, 私の人間観の一方の極になりました。
 大学卒業後の私の人生を端折ると, 3〜4年働いた後, 27歳で渡米。ニューヨークにて10年ほど大学・大学院で臨床心理学などを勉強, 学位と資格を取り, 10年ほど特別支援学校や病院, 心理クリニック(開業)などの仕事に従事。2001年帰国, という風になります。
 そして今も, 人が生きるとは何かということを考え続けています。一言で私が学んだことをまとめますと, 自分の専門というのはそれを本気で生きるということに他ならないのではないか, ということです。
 

kondo_toshiaki
近藤 俊明(Toshiaki Kondo)
プロフィール
専門:臨床・学校心理学
略歴:早大一文、NY市立大学、ホフストラ大学臨床・学校心理学博士課程卒、学術博士、サイコロジスト(NY州免許)、臨床心理士。NY州にて、病院、特殊教育学校、開業等を経て現職。

 現在は、以前のように着るものを家で縫ったり、編んだりしなくてもすむ時代になりました。ですから、縫うことや編むことを教えていくことは必要ないと思われています。そのため、親子間での伝承は、ほぼないでしょう。しかし、伝承しないとどうなるでしょうか。着るものに関する知識や技術が、世代が進む毎に薄れ、消えていきます。着るものは買えばすむ、と考える人もいるかもしれません。でも、あなたの服を、作っている人、デザインを考える人、その人たちの着るものに関する知識や技術が毎回ゼロからのスタートだったらどうでしょうか。着るものの文化は発展しないですね。

 そこで、重要なのが今持っている知識や技術を次世代に伝えていく行為なのです。親子間での伝承ももちろんですが、学校教育も重要です。次世代に伝える事を仕事としているのが教育者です。そう考えると、先生とは、本当に素晴らしい職業でもあり、重大な責任がある職業ともいえますね。

 私は、大学の授業で家庭科教育を教えている他に、地域のイベントに参加し、子どもを中心に縫ったり、編んだりの体験をしてもらっています。私が、子どもに教えられる知識や技術があるのは、大学で家政学部だった頃、4年間手芸を学修したからです。フランス刺しゅう、こぎん刺しゅう、カットワーク、ドロンワーク、キャンバスワーク、ビーズエンブロイダリー、クロッシェ、マクラメなど。聞いたことがないものが多いでしょうね。私は、これら手芸の技法を教育されることで、知識や技術を身に付けました。

 教育を受けて身についた知識や技術、それらを次世代に伝えていくことで、縫ったり、編んだりの文化、着るものの文化が後退しなければいいなと思っています。ですから、これからも大学の授業だけでなく、地域のイベントなどで、もっともっと伝えていきたいと思っています。イベントに参加してくれた子どもがいつかその体験を思い出し、次世代に伝えていくことを願って。

 

gazou_1

キャンバスワークの1つで、テントステッチで刺したものです。似た技法にみなさんご存じのクロスステッチがあります。

 
 

kobayashi_kumi
小林 久美(Kumi Kobayashi)

プロフィール

専門:家庭科教育
略歴:福岡教育大学大学院教育学研究科家政教育専攻修士課程終了(2002)。九州女子短期大学家政科助手、九州女子大学家政学部助手、九州女子大学人間科学部講師を経て現職。

 私は大学という場所が大好きで、大学の先生になってしまった人です。そんな私が大学を好きになったきっかけの1つをお話しします。
 
 大学2年生の時のことです。文献講読の授業がありました。文献講読とは、本や論文の内容を学生が分担して発表し、皆で議論することで理解を深めていく形式の授業です。
 その時の課題文献は、ネル・ノディングスという研究者が書いた『ケアリング』という本の訳書で、とても分厚く重い本です。328ページ、定価4000円!辞書以外でこんなに重く、高価な本を買ったのは初めてだったことでしょう。
 難しくて、でもなんだかすごいことが書いてある予感があって、妙に重みのある本を携えて初回の授業にドキドキしながら向かった覚えがあります。
 ドキドキした理由は、もう1つありました。それは授業の場所が教室ではなく、先生の研究室だったことです。研究室は、先生の個人部屋ですから、先生の家にお邪魔するのと同じような気持ちがして、ドキドキしました。
 さて、当日。行ってみると、その授業の出席者は私を含めて4人。1人は1年生。2人が2年生。1人は3年生と学年もバラバラです。あまり面識のない学生同士、緊張しつつ座っていると、驚きのことが起こったのです。「まぁどうぞ」などとおっしゃりながら、なんと、先生がコーヒーを入れてくれ、一緒にテーブルを囲んで座ったのでした。
 出席者は4人ではありませんでした。先生も、共に『ケアリング』について学ぼうとする出席者だったのです。(もちろん、先生は学術書を読み慣れていて、格段に背景知識に詳しいので、学生と同じではありませんでしたが。)
 
 高校までにこのような形式の授業があるでしょうか。5人という少人数で、学年もバラバラ。先生の部屋で、コーヒーを飲みながら、先生も共に学ぶ。私が大学を好きになり、教育学に興味をもったきっかけの1つです。(ついでにコーヒーも好きになりました。)
 
 この経験からも分かる通り、教育学を学ぶ面白さは、大人数での一斉授業や学年制、教師は教える人→生徒は勉強する人という二分法など、知らず知らずのうちに当たり前になっていた学校的常識から自由になり、経験が相対化されていくことだと思います。(この学校的常識には相応の理由があるので、良い悪いは別の問題です。)
 そんな面白さを学生たちに伝えられているかなぁ、と試行錯誤しながら私は現在、大好きな大学という場所で日々授業をしたり研究をしたりしています。(コーヒーも入れています。)
 
 

goto_masaya
後藤 正矢(Masaya Goto)

プロフィール

専門:教育学
経歴:東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。東京都内公立小学校教諭、東京教育専門学校専任講師などを経て現職。現在は教員養成・保育者養成の歴史的研究に注力している。

みなさんは、赤ちゃんを抱っこしたことがありますか?

 

東京未来大学の「発達生理心理学」の授業では、実際の赤ちゃんを抱っこするという経験をしてもらっています。実際の授業では、自分史の作成、様々なお母さんから赤ちゃんの様子についてのインタビュー(身長・体重・言葉・運動・食事・生理)、乳幼児を持つ親の困難さの学習をしています。実際に上野動物園まで親御さんと一緒に外出して子連れでのお出かけの困難さを体験し、バリアフリーやホスピタリティーについても学んでいます。

 私がなによりも大切にしていることは、お母様方との信頼関係です。お母様方に安心して授業にご協力頂くために、コンサートやベビーマッサージ講座、プレイルームの開放など参加者だけのメリットを用意し、また、育児に悩んだときはいつでも相談に乗れるようにしています。授業終了後も丁寧な関わりをして、継続的な関わりを持つことで信頼を得られるように努力しています。当然ながら、事故がおきたときのために保険に加入しています。

 最近のお母様方は、出産直前まで仕事をしていた方がほとんどで、0歳児の母親たちの大半は育児休業制度を利用しています。これまで協力してくださった方の職業は、小学校教諭、看護師、警察官、メーカー勤務の会社員、介護士、保育士、助産師、大学職員、パティシエなどで、多種多様な分野にわたっています。

 お母様方から、パートナーとの出会いや結婚、出産するタイミング、仕事復帰への不安について、生の声を聞くことで、学生達は自分の将来について深く考えるようになっています。お母様方も「未来大の学生さんのためならば!」という思いで、普段ならば話さないような話(たとえば、今のパートナーに出会うまでの恋愛経験や現在のパートナーとの関係など)といったご自身の経験談をしてくださる方もいらして、学生たちは熱心に耳を傾けています。これは、将来、仕事や家庭を持つための「キャリア教育」の一環といえるでしょう。

 お母様方も「我が子をかわいがってくれる未来大の学生さんに、少しでも幸せな人生を歩んでほしい。」とおっしゃってくださっています。本当にありがたいです。

 大学生と本物の赤ちゃんがふれあえる体験は全国的にも数が少なく、また、キャリア経験をもつ母親たちの話を聞くということはめずらしいでしょう。

 今年度、私のゼミの学生たちが「あだちまちづくりトラスト」という助成金を得て、7/14(金)10時半〜12時に「みらいキャリア講座」というタイトルで赤ちゃんふれあい講座を企画しました。

 学生の依頼で、私もお隣の東京電機大学の親しくしている教授を通じて、そのゼミ生(学部四年生の男子学生)をお誘いしたところ、「恥ずかしくて参加するには勇気がいりますね。」と言われてしまいました。未来大は女子が多いですが、東京電機大学は、学科によっては男子率が99%という学部もあるそうです! 現在、足立区には東京電機大学、帝京科学大学、放送大学、東京藝術大学といった5つの大学がありますので、懲りずにお声がけしていきたいと思っています。

 さて、明日から2日間、東京未来大学の未来祭。

授業に協力してくれていたベビーちゃんたちも、早いもので、幼稚園や保育園に通っています。明日は久しぶりに大学にきてくれるという連絡をもらっていますので、私もウキウキしています。

 大きくなったお子さんたちの笑顔を楽しみに、学生たちと会場の準備を進めます! 親子の休憩スペース「TOY LAND」でお待ちしています。

 
東京未来大学こどもふれあい事業

みらいキャリア設計講座

 

kotani_hiroko
小谷 博子(Hiroko Kotani)

プロフィール

専門:育児工学
略歴:東京大学大学院医学系研究科博士課程修了、博士(医学)。子育て中の親の脳機能研究に従事。行政と協同で子育てイベントを多数開催。著書は「出産で女性は賢くなる」(ごま書房)など多数。