運動やスポーツの場面で、「あの子は運動神経がいいね!」なんて言葉を耳にすることがあります。皆さんは「運動神経がいい」ですか?
 私たちの身体には、実際に「運動神経」と呼ばれる神経があります。生理学的にみた運動神経とは、身体を動かすための筋肉に運動指令を伝える神経のこと。でも、この運動神経、はたらきや性能は私たち皆同じ、スゴい運動神経をもっているから運動が上手というわけではないんです。だから、「君は運動神経いいの?」って聞かれたら、胸を張って答えましょう、「普通!」って。

 

 ところで、皆さんは体力測定をやったことがありますよね。次の測定のうち、遺伝の影響がもっとも大きいと考えられるのはどれでしょうか?
 ①50m走のタイム  ② ボール投げの距離  ③ 反復横跳びの回数

 

 双子を対象として身体のさまざまな特徴を調査した結果、一卵性双生児においてもっとも類似性が高い、つまり遺伝の影響がもっとも強いのは筋肉の性質(専門的には筋線維組成)であったという研究報告があります。筋肉の性質が強く関係し、動作が比較的単純でスキル(技能)の関与が小さい短距離走のタイムは、遺伝の影響が大きいと言えます。それに対して、身体の動かし方やパフォーマンスの成果は、形態的な要素と比べて遺伝的な影響が少なく、むしろ練習や訓練などの後天的な影響が大きいと考えられています。ボール投げの距離や反復横跳びの回数にも筋肉の性質は関係しますが、「投げ方」や「身のこなし」といった動作のスキルも大きく影響します。そう、遺伝の影響がもっとも大きいのは「① 50m走のタイム」です。

 

 一般的に「運動神経がよい」とは、「動作が巧み」であることを例えた表現です。その動作の巧みさには、遺伝的な影響よりも、練習などによる運動スキルの獲得が大きく関与しているのです。そして、その運動スキルを獲得するのにもっとも適した時期が幼児期〜児童期。子どもの頃にいっぱい身体を動かす、たくさんの動作を経験することは「運動が得意なる」ためにとても大切なことなんですね。

 

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真家 英俊(Hidetoshi Maie)
プロフィール
専門:運動生理学、スポーツバイオメカニクス
略歴:東京学芸大学大学院教育学研究科修了。体力医学研究所に所属後、三幸学園スポーツ系専門学校(東京/横浜)の教員を経て現職。

心と身体のつながり

2018年7月20日 投稿者:藤本 昌樹

 わたしは、発達心理学と臨床心理学を専門として大学の授業を行なっています。
 発達心理学というのは、人がお母さんのお腹の中で受精して、誕生してから死に至るまでのプロセスを心理学的に研究する領域のことを指します。また、一方で臨床心理学というのは、人の生きる間に起こる様々な心理学的な問題、つまり気分が落ち込んだり、人との付き合いがうまくいかなかったりする問題を、カウンセリング、心理療法などをつかって改善したり、また、そうした問題の成り立ちを研究したり、また、予防的な研究を行うことをします。

 

 この2つは、実は非常に関係がある領域です。人が発達するにつれ、その個人の持つ問題は、色々と形や見え方が変わってきますし、ある年代に特有の問題もあるからです。子どもの場合には、児童虐待や不登校の問題、勉強などの問題などがあるということがわかるでしょうし、大人の場合には、形を変えて、職場での適応、夫婦の問題などもあるわけです。
 そして、これらの問題についての本質を考えてみると、多くの場合、人と人との関わりが上手くいかないという事が問題となっていることが非常に多いように思います。

 

 この人との関わりのスタートは、誕生後の人間関係によって形成されます。たとえば、十分に面倒を見てもらえて、愛情を受けて育った場合には、自分は愛される価値があると思えるでしょうし、周りの人や環境も信頼できるという感覚が育つでしょう。逆に、適切な面倒を見てもらえず、大切にされなかった場合、自分自身の存在や価値について疑問を抱く可能性もありますし、周りの人のことも十分信頼できないという感覚が育つ可能性もあります。

 

 この感覚の発達は遡って考えてみると、乳児期の言葉が話せなかったり、覚えていると自覚する以前の感覚的な記憶が起点となっているわけです。この感覚的な記憶は、言葉では言い表せないものですから、身体的な感覚の記憶とも考えることができます。おそらく、そうした言葉で言い表せない、言語化できない記憶があるだろうと考えられるわけです。

 

 普通に生活していても、嫌なことを考えてみると、胸や胃のあたりに嫌な感覚がよみがえってくることというのも経験したことがあるかと思います。つまり、今現在起きてないこと、昔の事だとわかっていても身体はその時のことも覚えているとも言えるのではないでしょうか。もちろん、これは悪ことばかりではありません。楽しいことを思い出せば、身体も自然と楽しかった時の事を思い出すというわけです。
 つまり、これは心と身体が繋がっているということを示しているといえます。そして、これを臨床心理学に応用して考えて行くと、身体を利用して、身体の神経系の反応を軽減したり、調整しやすくする事で、トラウマと言われるような問題も解決することができるのです。

 

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藤本昌樹(Masaki Fujimoto)
プロフィール
専門:臨床心理学、発達心理学
略歴:東京学芸大学大学院心理学分野修了、東京医科歯科大学大学院修了。博士(看護学)、臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士。子どもから成人の心理療法を現場で実践している。

 

 みなさん、こんにちは。こども心理専攻の平部です。臨床心理学を専門としています。

 

 さて、カウンセリングについて大学で授業をしていると、「カウンセラーに向いている人はどういう人ですか?」という質問を受けることがあります。この質問にどう答えるかは、人によってさまざまだと思います。私自身は、カウンセリングには向き不向きもありますが、トレーニングによる部分が大きいと思っています。その前提がありつつも、私はよく「自分について考えられる人」と答えます。

 

 カウンセリングは、悩んだり問題を抱えたりして相談に来た人(クライエント)に対して、会話などのコミュニケーションによって援助をします。援助をする際に、その対象であるクライエントのことを理解するのが大事だということは、分かりやすいと思います。しかし、それだけではだめです。カウンセラーは、クライエントのことと同じくらい、自分について考えなくてはいけません。クライエントとの関係の中で自分は何を感じているのか、自分はどのような考え方をしがちな人なのか、そもそもなぜ自分はカウンセリングで人を援助しているのか、などなど。カウンセリングは、カウンセラーとクライエントの関係性の中で成り立つ援助です。ですから、自分について考えることは、クライエントを理解することにつながります。自分自身に向き合わずにクライエントを援助することは、基本的にはできないのです。どのような援助でも自分についての理解は必要ですが、カウンセリングは、そういう要素のとりわけ強い援助だと言えます。

 

 カウンセラーであるということは、カウンセラーとしての自分自身のあり方について考え続けるということです。「自分について考えられる人」というのは、そういう意味です。トレーニングで、考える姿勢を身につけることもできます。大学の授業も、自分について考える機会になります。自分について考えることには苦しさもあるので、あまり急いで突き詰める必要はありません。少しずつ、自分のペースで考えることが大事です。

 

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平部 正樹(Masaki Hirabe)
プロフィール
専門:臨床心理学
略歴:早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了。東邦大学助手、目白大学専任講師等を経て、現職。これまで、医療領域、教育領域、産業領域での心理臨床活動に従事してきている。

 

 誰にでも,苦手なものがあったり,苦手な人がいたり,苦手な対象の1つや2つはあるものだと思います。苦手なものや人のことを考えないようにする、苦手を意識しないように努めることがありますが,このような方法は、苦手意識の軽減や克服につながるのでしょうか。
 たとえば,人前での発表が苦手な人に、発表前には「苦手意識を捨てるんだよ」とアドバイスをしたり、発表がうまくいかなかったときには「気にするな」と声をかけたりすることがあります。このような声かけの仕方は、苦手意識をよりいっそう強めてしまうそうです。
 これは、思考抑制の逆説的効果といわれる現象と関連しています。思考抑制の逆説的効果とは、あることがら(思考)を考えないように努力するほど、そのことがらに関連した思考が頭に浮かびやすくなってしまう現象のことです。たとえば、苦手なクラスメイトのことを考えないようにしようと努めるとします。考えないようにするためには、頭に浮かんでくるクラスメイトの顔や行動を抑えこもうと、多くのパワーを要します。また、考えないようにしているときには、なぜか、そのクラスメイトの声や話題が耳に入りやすくなってしまうものです。
 このように、考えないようにしようと強く思うほど、苦手なものや苦手な人のことが気になってしまうという悪循環に陥ることがわかっています。これとは逆に、苦手なものや苦手な人のことが頭に浮かんできたとしても、無理に消し去ろうせずに自然にまかせておいたり、別のことを考えるようにしたりするほうが、苦手なものや苦手な人に関連する思考は増幅しないようです。
 問題から意識をそらしても何も解決しないように思われがちですが,苦手であることを気にしない、考えないようにすると,かえって苦手意識を高めてしまうこともあります。そのため,時には苦手なことや苦手な人から意識をそらし,気を楽にすることをおすすめします。

 

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日向野 智子(Tomoko Hyugano)

プロフィール
専門:対人社会心理学
略歴:2003年、昭和女子大学大学院生活機構研究科博士課程修了(学術博士)。東洋大学21世紀ヒューマン・インタラクション・リサーチ・センターPD、立正大学心理学部特任講師を経て、2013年より現職。

 私は,主に「臨床心理学」や「ひきこもり」のことを専門にしています。
 はじめてひきこもりの人と直接かかわるようになったのは,まだ大学生で臨床心理学を学び始めたばかりの頃,ボランティアとしていくつかの「居場所」や「フリースペース」と呼ばれる集まりに参加したときでした。ボランティアとして参加するまで,ひきこもりの人とほとんどかかわったことがなかった私は,当初は「ひきこもりの人って,みんな落ち込んで元気がないんだろうな」,「みんな部屋の端で黙ったままなのかな」と想像していましたが,良い意味で裏切られました。もちろん,緊張からか,なかなか周囲の人との話に参加できないような人もいましたが,そのような人ばかりでもなく,初めてのボランティアで緊張気味の私よりもむしろ積極的に話しかけてくれたり質問してくれたりする人もいて,本当にさまざまでした。そのとき私は正直なところ,「なんでこんなに元気なのにひきこもりなんだろう」と疑問に感じ,スタッフの人に尋ねると,「実際にはあの人(元気にみえるような人も)大変な状況なんだよ」と教えてもらって驚いたことを覚えています。

 

 このようなきっかけでかかわり始めた「ひきこもり」ですが,ひきこもりの人は,どのくらいの年齢の人か,みなさんご存知でしょうか?ひきこもりのことに関心をもってくれた大学生に尋ねると,「中高生くらい?」や「大学生くらい?」という印象を持っていることが多いように思います。しかし実際には,私も初めて知ったときは意外に思ったのですが,30~40代の人がもっとも多いという調査結果がいくつも報告されています。そのため,最近では,親子ともに「高年齢化」したときにどのように生活を成り立たせるかということそのものも大きな問題です。

 

 いま振り返ると,私が臨床心理学やひきこもりのことを取り組むようになったのは,自分が思っていた常識と実際のズレに驚き,「なぜだろう」と疑問に感じたことが1つのきっかけかもしれません。

 

野中先生
野中 俊介(Shunsuke Nonaka)

プロフィール

専門:臨床心理学
略歴:早稲田大学大学院博士後期課程修了。博士(人間科学)。臨床心理士。民間相談機関カウンセラー、東京都公立学校スクールカウンセラー、国立精神・神経医療研究センター非常勤研究員などを経て現職。

「地域で子どもを育てる」

 これは、近年の子育て支援のキーワードです。私自身の3人の子育てを振り返ってみても、核家族の子育ては想像以上に大変でした。私の実家は遠い九州。頼る人も周りにおらず、地域に溶け込むまでにかなり苦労しました。ですので、老若男女を問わず、どうすれば地域の方が子どもたちに関心を持ち、みんなで地域の子どもの育ちを支えることができるのかを考えることが私の博士論文のテーマでした。

 

 発達心理学では、親から子への愛情を母性や愛着などという概念で語ることが多いのですが、親子関係を超えた地域の子どもへのまなざしは、養護性という概念の当てはまりがよいように思えました。地域の子どもたちに対する養護性が育まれると、みんなで子育てという風土ができるのではないかと考えました。

 

 では、どうすれば「地域の子どもへの養護性」が形成されるのでしょうか?そのことを追求するために、子育て経験がある大人の人達にインタビューを行いました。すると自分の子どもを超えて地域の子どもへの養護性が高い人には特徴がありました。

 

1.幼少期に親以外の大人(地域の大人や親せき)から、声をかけてもらったり、

かわいがってもらった経験がある、

2.家庭がオープンで、様々な人の出入りがあった、

3. 異年齢で遊んだ経験があった、ということでした。

 

 1~3までの内容は、単純に見えますが、現代社会の中で保障していくのは案外大変なことです。しかし、このような経験を意図的に作ってあげないと、次の世代では、地域の大人として、地域の子どもたちへの養護性が育まれないかもしれないのです。それでは、どのような方法で?どのような形のものを?

 

 このように社会の問題を明らかにし、具体的に介入していく、これが私の専門とするコミュニティ心理学です。ぜひ皆さんも子どもが豊かに育つ社会を目指し、共にコミュニティ心理学や発達心理学を学んでいきましょう。

 

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藤後 悦子(Etsuko Togo)

プロフィール

専門:コミュニティ心理学

略歴:立教大学、 筑波大学大学院兼任講師を経て、現在に至る。学術博士(筑波大学)、臨床心理士。学校・保育・子育 て・スポーツ分野での臨床。放課後子ども教室や学童のスタッフ研修などを担当。

 毎日、全国各地でいろいろな犯罪が起きています。大きな事件が起きるたびにテレビ等のマスコミから出演を要請されてコメントを求められます。そこでよく聞かれるのは「先生、犯罪者ってどんな人なんですか?」。
 皆さんはどう思いますか?
 「犯罪者っぽいね」っていう表現に「黒いコートを着て、帽子をかぶり、サングラスをかけている」ってイメージや、「すぐに人を攻撃するようないかつい雰囲気」とかを連想しがちですが、そんなタイプは稀です。犯罪者という人がいるのではなく、普通の社会生活を送っている人が法を破れば犯罪者になっているだけ。つまり、私たちをと何も変わりはないのです。もちろん私たちも気を付けていないといつ犯罪者になるかわかりません。
 法を破ることは、絶対にないと言い切れる人は稀でしょう。自転車で歩道を走っている人はいませんか?横断歩道でないところで道を渡ったことがある人はいませんか?これらも立派に法を破っているという面では犯罪です。私たちも他人ごとではないのです。
 犯罪心理学は、こうした犯罪者の「犯罪に至る心理」を研究するものだと思われがちですが、実はその先にある犯罪者の「社会復帰をいかにさせるか」に焦点を当てています。講義の中で、学生たちは毎回事例を分析し、その先にある社会復帰をいかにさせるかを考えています。皆さんも事件に触れたとき、こうした視点で犯罪を、犯罪者をとらえてみてください。
 なによりも犯罪が繰り返されないために。
 

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出口 保行(Yasuyuki Deguchi)

プロフィール

専門:犯罪心理学、臨床心理学、青年心理学

略歴:大学院修了と同時に法務省に心理職として入省。全国の少年鑑別所や刑務所で犯罪者の心理分析を担当した。現在もマスコミにおける犯罪解説やバラエティ番組出演も多数。