質問1:地元の「お祭り」に行ったことがありますか?
 質問2:地元の「お祭り」がなぜ行われているか知っていますか?
 質問3:地元の「お祭り」を行う側として参加したことはありますか?

 

 質問1に関して多くの人は「はい」と答えたことと思います。それでは、質問2、質問3はどうでしょうか。多くの人が「知らない」や「いいえ」と答えたのではないでしょうか。昨年保育者養成校に通う大学生や短大生にアンケートを行いました。ほとんどの学生が地元のお祭りに行ったことがあるとしながら、参加したことがあるとした学生はやはりごく少数でした。
 平成29年に告示された幼稚園や保育所における保育の基準としての幼稚園教育要領や保育所保育指針に「日常生活の中で、わが国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむ。」という子どもたちが経験する内容が示されました。また、幼稚園や保育所の保育において大切にしていることは、対象を理解することではなく、対象を体験することです。つまり、子どもたちが地域社会における様々な文化や伝統を体験し、親しむということが求められているといえます。そのため保育者は子どもたちに文化や伝統に関する豊かな体験を保障する必要があるでしょう。
 最近の若者は地元志向が強いという研究結果があります。でもそれは、地元地域に愛着を感じているというより、地元の友だちとのつながりによるものだとされています。前述のアンケートにおいて、地元地域の名所を質問したところ「ショッピングモール」や「駅」といった答えが少なくなかったことには驚かされました。友だちと集うショッピングモールや駅はその多くが地域特有のものではないでしょう。これは若い世代だけの問題ではなく、私たち親世代の問題でもあります。
 近年、地方創成として、各地域がそれぞれの特徴を生かした自立的で持続的な社会づくりをすることが目指されています。まずは、通学・通勤途中の風景でしかなかった地元に目を向けてみませんか。今まで気づかなかった新しい発見があるかもしれません。

 

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及川 留美(Rumi Oikawa)
プロフィール
専門:保育学
略歴:聖徳大学児童学研究科博士後期課程単位取得満期退学。幼稚園や保育所などの現場を研究の対象とし、保育者や親を中心とした大人と子どもとの関わりについてフィールドワークを行っている。

 以下は、私が担当している授業(「子ども家庭福祉」「社会的養護」等)やその関連書籍等で触れている内容であるが、それを次の2点で整理したい。第一点目は、少子化における子ども環境の変化であり、第二点目は、少子化なのに「ニーズが増大している?!」というちょっと不思議な現象である。
 まず、第一点目であるが、現代社会の課題は単純にはとらえられない。たとえば、長寿社会をありがたいと思う反面、少子高齢化の社会経済的変化に伴う介護や「孤独」に対する不安が増加するのではという両面があげられる。これまで、少子化にはこれといった歯止めがかからず、2005(H17)年の合計特殊出生率は、過去最低の1.26となり、出生数も2017(H29)年に約94万人と戦後最低となった。このことを、1949(S24)年の第一次ベビーブームの4.32、約270万人、1973(S48)年の第二次ベビーブームの2.14、約209万人と比べると、その数的な変化の大きさがもたらす社会構造の激変が容易に想像できる。(2015年1.45とわずかに上昇したが、出生数は減少が続き、すでに、我が国の人口減が始まっている)以上のように、今後、確実におとずれる超高齢社会における不安の第一点目は、それを担う子どもの数が減っているということから発生しているといえる。
 第二点目は、少子化によって児童に対する支援のニーズが減少するのかというとそう単純ではないようだ。なかなか充足されない保育ニーズ、児童虐待等の社会的問題の深刻さや複雑化等、子育てに対する総合的なニーズの総体は、子だくさんであった以前にも増して大きくなっているのではないかという、一見すると「不思議な」現象が起きている。
 希望であるはずの子育てが、現代社会の複雑さや混迷による社会不安によって子育てをしづらい社会環境や生活のしづらさに直結し、最も立場の弱い子どもたちに大きなしわ寄せとなって襲ってきているといえるだろう。もちろん授業では、天災や事故などの災害の恐ろしさは、豊かさや安全を求めてきた現代社会のもろさを見せつけているが、同時に世代を超えた地域の連帯感や若者をはじめとする多くの支援活動は「人とつながる」感動と勇気を私たちに教えてくれているということも強調している。

 

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上田 征三(Yukumi Ueda)
プロフィール
専門:障がい児教育
略歴:筑波大学大学院修士課程修了後、知的障がい児・者施設での療育やソー シャルワーク部門設立に従事。1998年から大学で「障害児教育論」等を担当し、主にインクルーシブ教育の合理的配慮研究を進めている。

子育てを考える

2019年1月11日 投稿者:今井 康晴

 新年、あけましておめでとうございます。皆様には、健やかに新春を迎えられたことと、お慶び申し上げます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 

 私は、「保育原理」という授業を担当しております。「保育原理」では、保育の基礎となる思想・哲学、人物、歴史、発達、保育内容、保育方法など網羅的に学びますが、子どもの教育や保育、福祉に関する法律について講義します。なかでも教育基本法と児童福祉法の理解は必要不可欠であり、その一例を示しますと以下のようになります。(※紙面の関係上、一部抜粋しております)

 

※教育基本法※
(家庭教育)
第十条
2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。

 

(幼児期の教育)
第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。

 

(学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力)
第十三条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。

 

※児童福祉法※
第一条 すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。
2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。

 

第二条 国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。

 

第三条 前二条に規定するところは、児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない。

 

 このように両法律の内容には教育、保育、福祉、また子育ての根幹をなすものであります。このブログを読んで、ぜひ教育、保育、福祉に関わる法律の知識、理解を深めてください!

 

・・・

 

 と話はここで終わりません。抜粋した両法律ですが、なぜ一部分を載せたかというと、共通して「国及び地方公共団体」という文言が使用されています。つまり、教育、保育、福祉はもとより子育て、家庭など子どもに関わる様々な事柄や課題は、社会全体で責任をもって対処し、支援するということが法律によって定められているということです。
 このことを念頭に置いた時、わが国の現状を顧みると、社会はその責任を果たしているでしょうか? 「子どもの声がうるさい」という理由で保育所の建設が断念されたり、「土地の値打ちが下がる」という理由で児童相談所の建設が反対されたり、耳を疑いたくなるようなニュースが散見されます。私的な都合を優先させ、社会としての義務を見失っているのではないでしょうか。
 わが国初の子育て支援政策として「エンゼルプラン」が挙げられます。この「エンゼルプラン」の意図するところは、エンゼル、すなわち子どもを「天使」に見立て、天使のような子どもいかに社会として育てていくかという計画(プラン)であります。しかし、いつから、子どもは天使ではなく、騒音やお荷物になってしまったのでしょうか。
 私は、子どもは天使であり、国の「未来」だと考えます。子育てをプライベートな問題、個人的な観点で捉えるのではなく、国の「未来」として真剣に考えることが必要ではないでしょうか。

 

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今井 康晴(Yasuharu Imai)
プロフィール
専門:教育学、保育学、教育課程、教育方法
略歴:広島大学大学院単位取得後満期退学。東広島市立小学校非常勤講師、武蔵野短期大学幼児教育学科専任講師を経て現職。保幼小連携、子育て支援についても研究中。

子どもの生活で気になること

2018年12月14日 投稿者:泉 秀生

 私は、こども保育・教育専攻に所属し、子どもの健康について研究しています。とくに、生活習慣や生活リズム、子育ての方法などに関する調査や分析をしています。
 最近の街中で気になることとしては、何かをしながらスマートフォンを使用する、いわゆる、「ながらスマホ」です。週末の公園をみると、わが子が砂あそびに興じている中、砂場の周りでスマホに夢中になっているお父さんの姿がよく目につきます。また、電車の中に目を向けると、幼い子どもや赤ちゃんまでもがスマートフォンを見ています。視力の低下が心配されるのはもちろんのこと、最近の子ども向け番組は光の刺激が強すぎる印象があるので、子どもたちに興奮状態をもたらしてしまうこと、また、なによりもお母さんやお父さんとのコミュニケーションの機会を奪うことを懸念しています。
 最近の日本では、夜10時以降に就寝している幼児の割合が4割以上いることが報告されています。実際、夜のコンビニやファミリーレストラン、居酒屋などで小さい子どもを連れた家庭をみる機会も増えました。私が小さい頃は、9時までに布団に入っていなければ親に怒られました。ましてや、夜10時以降に起きているなんて、恐くてできませんでした。
 生活についてさらに調べてみると、朝食を食べていない幼児が1~2割いること、外あそびをしない子どもの多いこと等、自分自身の幼児期の暮らしと大きくかけ離れた現状に驚きます。このような乱れた生活をおくっている子どもは、一般的に、日中の注意力や集中力が欠如していること、また、ささいなことでもキレやすい等の特徴が報告されています。また、朝から疲れており、友だちや先生との交流が十分にできていない様子です。
 幼い子どもを育てる保護者は、働き盛りであり、忙しい中で一生懸命に子育てをしている家庭が多いと思います。しかし、顔や体、言葉、運動能力など、一生のうちで、とくに変化の著しい乳幼児期くらいは、1日のうちに30分でも良いので、わが子とふれあってもらい、週末には、スマホやテレビに目を向ける時間を、わが子の方に向けてほしいものです。そして、規則正しい生活を、わが子に提供してもらいたいです。

 

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泉 秀生(Shu Izumi)
プロフィール
専門:児童福祉、福祉教育
略歴:早稲田大学人間科学部卒業、同大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。早稲田大学人間科学部eスクール教育コーチ、社会福祉士。2016年4月より現職。

子育て支援と心理学

2018年11月30日 投稿者:井梅 由美子

 昨今、「子育て支援」という言葉が多く聞かれるようになりました。皆さんが住んでいらっしゃる地域にも、子育て支援センターや親子広場など、さまざまな施設があるかと思います。なぜ、子育て支援の必要性がこんなにも言われるようになったのでしょうか?昨今の親になる人たちの子育てが未熟だからでしょうか?
 子どもが心身ともに健康に育つためには、養育者の関わりが必須になります。特に人間の赤ちゃんは多くの動物の赤ちゃんと違い、生まれてすぐは自分一人では何もできない存在ですから、養育者(主にお母さん)の24時間365日、休みないお世話が必要になります。
 子育てはこのように大変な難事業ですので、お母さん一人ではとても大変です。かつては祖父母や親せき、地域の周りの大人たちが、初めて親になる人たちを自然とサポートし、子どもたちの成長を地域で見守ってくれました。そうしたサポートの中で、だんだんと“親らしく”なっていったのだと思います。子育ては本来、親が一人だけでするものではないのです。
 しかし昨今、核家族化が進む中、子育てを自然とサポートしてくれる地域の大人たちの存在はなくなりつつあります。外で悪さをしている子どもたちに「こら~!」と怒ってくれる頑固おやじ(!?)はいなくなってしまいました。子育ての責任は全て“親”。これでは子育ては大変になるばかりです。だからこそ、制度としての「子育て支援」が必要なのです。
 保育所は今、地域の子育て家庭への支援の役割も求められています。保育所の先生は子どもの育ちや保育についてのエキスパート、かつての地域での子育てサポーター(近所のおじちゃんおばちゃん)に代わり、新米ママパパの相談相手として、大変に期待されている存在です。
 私自身の専門は「臨床心理学」で、心の健康やケアについて学ぶ学問領域です。子どもがのびのびと心身ともに健康に育つためには、お父さんお母さんがリラックスして子育てに向かえる環境が必要です。子育て支援と心理学、私たちの心の健康を考える上で大変重要なテーマであると思っています。

 

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井梅 由美子(Yumiko Iume)

プロフィール

専門:発達臨床心理学
略歴:お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程単位取得退学。相模女子大学、青山学院女子短期大学の非常勤講師等を経て現職。精神科クリニックや小児科等で臨床活動を行ってきた。

 オレンジリボンは日本では子どもの虐待防止を表しています。世界的にはさらに人種差別をなくす意味も加わります。オレンジは子どもたちの明るい未来を象徴する色です。
 日本でオレンジリボン運動が始まったのにはきっかけがありました。2004年に栃木県小山市で3歳と4歳の幼い兄弟が暴行の末殺害された事件です。東京で暮らしていたこの兄弟と父親は実家のある栃木県に移り、やがて知人の家の居候になります。同居によるストレスから知人は兄弟に暴力をふるい始めました。兄弟の様子を見かねて保育園や施設が一時的に保護しましたが、結局家に戻されます。そして最後は二人の遺体が川で発見されることとなったのです。連日、ワイドショーなどでマスコミが放送する大きな事件でした。
 当時私は栃木県の短大に勤務していました。事件現場は隣の市で、土地勘のある学生たちには動揺が広がりました。何よりも、兄弟の境遇は把握されていて手が差し伸べられたのにもかかわらず、最悪の事態を避けられなかったことに地域の人々はみな苦い思いをしたのでした。
 そして2005年、小山市のNPO法人がこのような事件が二度と起こらないようにとの願いを込めて、子ども虐待防止を目指すオレンジリボン運動を始めました。2006年からは、児童虐待防止全国ネットワークが総合窓口となり全国規模の運動へと発展して行きます。
 11月は児童虐待防止推進月間です。東京未来大学もこの運動に協力していて、足立区こども支援センターのオレンジリボン全国一斉街頭配布では学生たちがボランティアとして毎年参加します。ここで呼びかけているのは、ほんの少しでも子どもの虐待が疑われたら児童相談所に通告することです。電話番号は全国共通「189」。「いち早く」知らせてほしいという意味が込められています。もしかしたら虐待?と思ったら、ためらわずに電話をしてください。

オレンジリボン

 

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渡辺 千歳(Chitose Watanabe)
プロフィール
専門:発達心理学
略歴:お茶の水女子大学大学院博士課程修了。保健相談所の1歳6か月児ことばの相談や、足立区立保育園での発達支援児巡回相談など子育てや保育における発達臨床に携わっている。臨床発達心理士。

鳥取と私と心理学と

2018年10月26日 投稿者:横畑 泰希

 「スタバはないけど、日本一のスナバはある!」という、少し寒いダジャレをお聞きになったことはありますか?鳥取県の平井知事が、よく口にしていたフレーズです。スタバというのはあの有名はコーヒーチェーン、スナバというのは鳥取砂丘のことです。首都圏にお住いの方には想像もできないかもしれませんが、2015年まで鳥取県にはスタバが出店されていませんでした。しかも、セブンイレブンも同年まで出店されていなかったので、全国を席巻する二大巨頭の両方ともが、つい最近まで存在しない唯一の都道府県だったのです。ないことをウリにするという自虐的なアピールが功を奏し、鳥取県の知名度もだいぶ上がったように思います。
 私の苗字である橫畑のルーツは、その鳥取県にあります。私自身は東京生まれの東京育ちですが、先祖代々は鳥取の山奥にある集落の在でした。鳥取県日野郡日野町板井原というのがそれです。現在は、この集落で橫畑を名乗る家は残っていませんが、先祖代々のお墓がまだ残っています。毎年1回は必ず、そのお墓参り(掃除)に訪れるようにしています。たいていはお盆の前後ですが、今年は10月中旬に行ってきました。墓石をすっかり覆いつくしている草を刈り、掃除が終わった状態が写真です。写真左手は崖になっているのですが、柵が設置されているわけでもなく、かなりの危険が伴うお墓参りです。
 先ほども言いましたが、私自身は東京生まれの東京育ちですから、この鳥取に住んだことはありません。親から話は聞いていたものの、実際に初めて訪れたのは30歳を過ぎた頃でした。ところがその時、初めて訪れたにも拘わらず、「あぁ帰ってきた」という意識が湧いてきたのです。それは今でもはっきりと覚えていますし、実に不思議でした。この現象を説明しようとすれば、デジャブ(既視感)、刷り込み、先入観など、色々な概念が当てはめられる気がします。深層的な無意識世界にある何かが作用したとも解釈できるかもしれません。そういえば、著名な心理学者であるユングは、その種族や民族に共通する無意識として、「集合的無意識」なるものが存在すると言っています。自分自身の意識世界でありながら、時には自分自身でさえ分からなくなることがあります。ましてや、他者の心を了解することなど、間違いなく難しいはずです。しかし、その難しさが心理学の楽しさであることも間違いありません。

 

横畑先生写真

 

yokohata_taiki.jpg(切り取り)
横畑 泰希(Taiki Yokohata)

プロフィール

専門:発達臨床心理学
略歴:淑徳大学大学院博士後期課程単位取得退学。臨床発達心理士。一般企業退職後、保育園や子育て支援施設で勤務。現在も心理相談、発達相談、カウンセリング、プレイセラピーに携わっている。