育児の科学的な研究を通して、母子に快適な育児環境を(小谷博子先生)

2015年8月4日 投稿者:小谷 博子

私は「育児工学」という新しい分野の研究に取り組んでいます。育児工学とは、育児と最新の工学技術(サーモグラフィーや脳波計などのエレクトロニクスやコンピュータ技術)を融合させ、物言わぬ赤ちゃんの気持ちを推し量り、産後の母親と赤ちゃんのために快適な育児環境を実現する学問です。今の母親は多くの情報に翻弄され、「何が正しく、何が間違っているのか」が、全くわからない中で子育てをしているのが現状です。
 
14年前、私もまさにその一人でした。我が子を出産した際に、へその緒がついたままだっこするという感動的な出産を経験し「子どものために何ができるかしら?」と、子どもに良いとされる情報を私は片っ端から集めました。「あなたの子どもを天才に!」という宣伝文句が載っていれば資料請求し、実際に営業の人から「脳細胞がたくさんある赤ちゃんのうちから行わないと後で後悔しますよ。」という説明を聞いて、「これはすぐにやらなくては!」と思ったくらいです。当時の私は、早期教育について、身内から反対されても聞く耳を持たず、所属していた東大の研究室の友人や上司たちから「早期教育は絶対にやめたほうがいい」といわれて、初めて目が覚めたのでした。
 
子どものために良いとされることって、いったい何?母乳育児、ベビーマッサージ、絵本の読み聞かせ、おんぶ、だっこ、添い寝、・・・。離乳食はいったいいつ始めればよいの?おしゃぶりは必要なの? 昔ながらの子育てのよさは、なんとなくわかるけれど、どのような根拠があるの?
 
そのような悶々とした思いを胸に秘めながらも、当時の私は、出産前から行っていた「生体工学」の研究を行っておりました。娘が熱を出そうとも、休むことはできず、細胞培養に精を出す日々。そして、子連れでの海外出張もカナダ、オランダとなんとかこなしました。
 
しかしながら、産後すぐから復帰し、体に無理を重ねたためか、自分自身の体を壊してしまいました。「このままではいけない!」そう思った頃、まだほとんど研究のなされていなかった「育児工学」という研究分野に転向しました。現在は、「母と子のコミュニケーションに関する研究」をメインテーマに、①出産前後の女性の脳機能変化の研究 ②産後の母親と乳児におけるベビーマッサージの効果 ③授乳中の母親と乳児の脳研究 ④産後うつの研究などの研究を行っています。ベビーマッサージの効果については、マッサージを受けている赤ちゃんだけでなく、母親にもリラックス効果があることを証明し、雑誌や新聞などでも研究を紹介して頂きました。
 
また、研究以外にも、大学内でベビーとママのためのコンサートといった育児支援講座を開催しています。講座や研究を開催して思うことは、現代の子育ては、あまりにも多い情報と便利さのみを追求した育児グッズが、逆に若い母親たちを追い詰め、育児をむずかしいものにしているような気がします。実際、さまざまな情報の中には不正確なものもたくさんあります。経験的に伝えられてきたことを科学的に裏付けると同時に、母親になる前の若い女性にも育児の正しい知識を広めていくことが必要だと感じています。
 
私の研究室には、通学生のゼミ生はもちろん、社会人や子育て中のお母さんが通信のゼミ生として研究室に所属し、育児工学の研究に取り組んでいます。あなたも、東京未来大学で育児工学の研究に取り組んでみませんか? 社会に役に立つ研究を一緒に取り組んでいきましょう!
 
 

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小谷 博子(Hiroko Kotani)
プロフィール
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了、博士(医学)。育児を科学的にとらえる「育児工学」の専門家。さまざまな親子との出会いや自身の育児経験をもとに、出産による女性の脳機能の変化について研究中。