記憶と時間

2016年2月26日 投稿者:坪井 寿子

みなさんは“記憶”に対してどのようなイメージを持っていますか。いわゆる暗記学習など無味乾燥なイメージが考えられがちですが、もっとダイナミックな側面もあります。
 
記憶にはさまざまなものがあります。たとえば、時間的空間的に特定化されるできごとの記憶をエピソード記憶といいます。さらに、過去のできごとを再体験するような意識状態を「メンタルタイムトラベル(mental time travel)」といって、これがエピソード記憶の重要な特徴であるとされています。私たちの記憶は、時間が経つとだんだん忘れてしまいますが、印象的なできごとについては、かなり以前のことでも鮮明にありありと当時の状況が想起されます。さらに、未来のことがらに対して想像、予測、プランニングをする際にもこのエピソード記憶がかかわることが示されており、未来へのメンタルタイムトラベルといったことも可能になります。
 
印象的な過去のできごとは、思い出として残っていることが多いです。例えば、私たちは子どもの頃の思い出を振り返ると、過去への憧憬ということで、懐かしいという気持ちになります。その中には、楽しい思い出もあれば、少しほろ苦い思い出もあることでしょう。その一方で、将来の見通しが立たず、迷ったり戸惑ったりしたときに、これまでの過去の経験を振り返ることもあると思います。私たちはこのようにして、過去を顧みたり未来を展望したりと過去-現在-未来の時間の流れを行き来しているといえます。
 
このようなエピソード記憶やメンタルタイムトラベルについては、記憶の働きとして認知心理学の領域から取り上げられていますが、高校生や大学生のみなさんが将来の進路について考える際にも、過去-現在-未来と時間の流れの中で考えてみるのもよいかもしれません。
 
 

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坪井 寿子(Hisako Tsuboi)

プロフィール

記憶や思考の働きについて発達心理学や認知心理学から取り組んでいます。「子どもの頃の思い出を振り返る」「うっかり忘れてしまうのはなぜ」等がテーマです。著書には『子ども心理学入門』他があります。