保育の場としての「院内保育所」

2016年4月29日 投稿者:西村 実穂

「院内保育所」をご存知でしょうか。院内保育所は、病院に勤務する医療従事者の子どもたちを預かる保育所です。私はこれまで院内保育所をテーマとして研究を行ってきました。また、学生のころには保育ボランティアをしたり、保育士として勤務したりとさまざまな形で院内保育所に関わってきました。
 
院内保育所に関わるなかで、院内保育所は医療従事者のための「子育て支援施設」として認識され、保育サービスの内容に関する議論はなされているものの、院内保育所の子どもたちや保育士については注目されることが少なく、「保育の場」としてこれで良いのだろうかと感じることが多々あります。
 
院内保育所は「医療従事者の勤務に合わせた保育ができる」「アットホームな保育ができる」ことが特徴といわれています。定員3名ほどのごく小規模な保育所から、在園児数が120名を超える大きな保育所もあります。また、夜間や休日の保育をしている保育所も多くあります。夜勤や休日出勤がある医療従事者には必要な保育ですが、夜間や休日も子どもたちを預かるためには、保育士たちも夜勤や休日勤務をすることになります。小規模な保育所で夜勤をする場合、数名の保育者が交代で夜勤をしなければならず、夜勤の負担が特定の保育者に偏ってしまうことがあります。
 
また、夜勤時には、保育者がしっかりと仮眠をとることのできる院内保育所は少なく、保育者は子どもを見ながら身体を休めています。夜勤があるときには、子どもたちの朝食や夕食を保育士が作ることもあります。さらに、子どもたちの在園時間も認可保育所に比べて長いです。調査をしていて驚いたことに、保護者が夜勤の場合には30時間以上、保育所で過ごしている子どももいました。保育時間が長時間になると、保育士がいくら努力して、楽しくて家庭的な保育所を作っても、やっぱり子どもたちの負担は非常に大きなものになってしまいます。
 
保育所不足の昨今、院内保育所をもっと増やしてはどうかという意見を耳にすることがあります。しかし、院内保育所が増えることは本当に良いことでしょうか。病院にとっては便利な保育所かもしれないですが、そこで生活する子どもや勤務する保育者の視点が置き去りになってはいないでしょうか。院内保育所は「医療従事者の子育て支援施設」でもありますが、同時に「保育の場」でもあるのです。
 
今ある院内保育所で、質の高い保育を行うことも必要ですが、保育サービスのことだけではなく、院内保育所で実践されている保育内容についても検討していくことが必要だと考え、研究に取り組んでいきたいと思っています。
 
 

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西村 実穂(Miho Nishimura)
プロフィール
専門:気になる子どもの保育、乳児保育
略歴:筑波大学大学院人間総合科学研究科修了、博士(学術)。
大学院時代に保育士、看護師として勤務。東洋大学勤務を経て、2014年より現職。