私の教育実習体験記

2016年7月29日 投稿者:森 薫

こんにちは。

 

本学こども心理学部のこども保育・教育専攻の学生たちは、その多くが幼稚園や保育所、小学校での実習を経て、免許や資格を取得することになります。今回は私自身の教育実習体験について振り返ってみたいと思います。

 

大学3年生の秋、私は中学・高等学校の音楽の教員免許を取得するために中学校に教育実習に行きました。先生方の授業技術や生徒達をみる視点、そして多忙なお仕事ぶりを目の当たりにして驚いたり、一緒に臨んだ同級生にアドバイスをもらったりしながら実習の日々は飛ぶように過ぎ、あっという間に自分が研究授業をする日がやってきました。

 

研究授業とは、児童や生徒を相手に実習生が実際に授業を行い、中学校の先生にご指導を頂くというもの。実習の集大成を見せる場ともいえる大事な機会です。何せうまれて初めて何十人もの生徒を前に授業をするわけですから、私は数週間前から学習指導案(授業のプランを書いたもの)を練り、その他に台本もつくって夜な夜な練習をしました。ぴったり50分に収まるようストップウォッチを片手に持って、ちょっとした冗談なんかも全部台本に書き入れて。

 

そして当日。ドキドキしながら音楽室に入り、あいさつをして、プリントを配り始めたときに私の耳に入ってきたのは…

 

「これって成績に関係あんの?」「ないんじゃん?実習生だし。」「じゃ、適当でいいや。」

 

という会話でした。授業の出だしからあまりにもショックな言葉に、逃げ出したくなる私。今ならドスのきいた声で「○○さん、なんて言った!!?」くらいのことを言えそうなものですが、当時のうら若き繊細な(!)私は、聞こえなかったふりをするのが精一杯でした。自分でも表情がこわばっているのを感じながら、上ずった声で何とか授業を進めることしかできず、台本に入れた冗談は、ひとつも言えなかったなあ。

 

さて、ここまで書くと、実習ってただただハードなものなのかという印象を持ってしまうかもしれません。でも実は、この授業がきっかけで、私は教員になりたいと改めて思い、また人の音楽学習というものに関心を抱くようになりました。

 

私が行った研究授業はいくつかの楽曲を鑑賞し、そのイメージをもとにタイトルを類推するという内容でした。その過程で、同じ音楽を聴いても一人ひとり違う感想があり、生徒たちがそれをやり取りしながら各楽曲の特徴について語る様子や、彼らなりに音楽の用語を使いながら作品への理解をつくりあげていく様子が、なんとも面白かったのです。

 

そして、授業冒頭で大ショックを与えてくれた生徒達も、徐々に表情が和らぎ、後半では笑いあいながら聴いた曲の好きな部分を語っていました。しめしめと思いながら心底ほっとし、思春期真っ只中の生徒とのコミュニケーションについてのヒントも、ほんの少しだけ分かったような気がしたのです。

 

その後私は音楽教育の勉強を本格的にはじめ、現在も音楽学習に関わる知識とはどのようなものかについて、研究を続けています。授業をすることも日常になり、かつてのようにド緊張するようなことは少なくなりましたが、今もやはり、授業中の学生の反応に日々驚かされ、そこから何かを発見したり、あらたな探求がはじまったりすることは変わりません。

 

これを読んでいる皆さんの中にも、これから教育実習や保育実習に出ることになる方がいると思います。思い切り準備をして、そのときできる精一杯の授業や保育をし、うまくいったりいかなかったりするその中で子ども達の反応に目や耳を向けて、様々なこと・新しい自分に出会ってほしいと思います。

 

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森 薫(Kaoru Mori)

プロフィール

専門:音楽科教育学

略歴:東京学芸大学教育学部卒業。同大学院連合学校教育学研究科芸術系教育講座単位修得満期退学。音楽学習に関する様々なタイプの知識や、子ども達がうたうわらべうたに関心を抱き、研究している。