ちょっとした疑問を大切に 

2017年2月10日 投稿者:大橋 恵

いつも自由研究のネタには悩まされるのですが、今年の娘の自由研究のネタはすんなり決まりました。何かの折で出掛けたときに出た、「駅のスロープはちゃんと使われているのかな」という疑問を実証してみることにしたのです。ちょうど学校で「バリアフリー」について学んだところでしたので、気になったのでしょう。

そこで、最寄り駅のスロープを観察し、どんな人が階段ではなくスロープを選ぶのか調べることになりました。休日と平日、朝と夕方では通る人の種類が違います。そこで、休日と平日それぞれ二日ずつ、8時台12時台18時台の3回に分けて、観察に出掛けました。そもそも通りかかる人が多ければスロープを使う人も多くなりますから、スロープを使いそうだけれども使わなかった人も数えました。具体的には、子連れ、お年寄り、体の不自由な人で階段を使った人の数も数えました。

その結果、スロープを一番使っていたのはスーツケースなりキャリーなりを引いた人たちで(7月下旬から8月上旬でしたから旅行も多かったのでしょう)、次は自転車の人たちでした。彼らは通りかかればほぼスロープを選びました。お年寄りは(そもそも外見からお年寄りと判定するのが大変難しかったのですが)、実は大半が階段を使っていて、長距離歩くスロープは案外人気がありませんでした。つまり、バリアフリーのために作られたはずのスロープは健常な大人の役に立っていました。これは、年齢や性別、障害・能力の如何を問わずに利用することができる施設・製品・情報の設計である「ユニバーサルデザイン」だね、と言って終わりました。

これは小学校最後の自由研究のお話。だから内容はシンプルなものでしたが、そのプロセスが何と卒業論文と似ていたことか!

うちの卒業論文では、自分で気になることを探して研究することを奨励しています。そのプロセスの中で案外難しいのは、自分なりの疑問を探して、それに執着すること。自分で選んでと言われて困った顔をする学生を何人も見てきましたが、高校までと大学の最も大きな違いはここ、正解がないこと、だからこそ選べることだと思うのです。高校までは教えを乞う生徒ですが、大学では自ら学ぶ学生になります。

これから大学に進学される皆さん、いま大学生活を謳歌している皆さん、ちょっとした疑問を大切にする習慣をつけてください。大人になったら答えがない問題が沢山です。疑問を持って自分で考える力をぜひ大学生のうちに着けましょう。ただし、何も知識がないと考えは発展しません。学生時代に、社会で応用できるだけの十分な基礎知識を詰め込んでおくこともまた、怠ってはいけないと思うのです。

 

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大橋 恵(Megumi Ohashi)
プロフィール
専門:社会心理学、文化心理学
略歴:東京大学文学部社会心理学科卒業
東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了
放送大学、東京学芸大学、跡見学園女子大学等の非常勤講師
日本大学大学院での非常勤助手