「イガナ」の正体

2017年6月9日 投稿者:その他

「だって“イガナ”やもん…。」

 
その日は,算数の「ながさくらべ」の授業。研究授業で,私は参観者でした。
小学校1年生のひとみさん(仮名)が授業後つぶやいた言葉に,私はハッとさせられました。

 
先生:「えんぴつ「ア」とえんぴつ「イ」は,どちらがながいでしょう?」
1年生:「えんぴつ「ア」です!」
先生:「どうやってくらべるのかな?」
1年生:「こうやって…こうすると…ほら♪」
先生の質問に1年生が元気よく答えていきます。続けて先生が質問します。
先生:「ねぇみんな,“ながい”のはんたいはな~に?」
1年生:「“みじかい”です!」
先生:「そうですね。じゃあこのなかで,いちばんみじかいえんぴつはどれですか?」

 
この時です。一瞬にして表情が曇った子を見つけました。その子がひとみさんです。
その後,他の子たちが楽しそうに授業を受けている中,ひとみさんの表情がずっと冴えません。そのままチャイムが鳴りました。理由がどうしても気になり,授業後こっそり聞いてみるとひとみさんはこう言いました。

 
ひとみさん:「だって“イガナ”やもん…。」
ひとみさん:「だって,“な・が・い”の反対(・・)は,“い・が・な”やもん!」
私:「!!!!」

 
子どもは,先生の言葉を一生懸命聞いています。
そして,先生が予想もしないところで,毎日算数の学習に躓いています。
さてこの間違い,言葉上での単なる勘違いによるものだったのでしょうか?
もし仮にそうなら,授業の途中で,本人が自分の間違いに気づいても良さそうです。

 
1年生は普段,何を見てどの部分のことを「ながい」,「みじかい」と言っているのでしょうか?
1年生は日常生活の中で「長さ」をどのように捉えているのでしょうか?
私たち大人だってそうです。
「“長さ”とは何か?」
このブログを読んでいるあなたは,この質問に的確に答えることができますか?

 
子どもの躓きの背景には,算数・数学教育の本質が隠されています。
私は今,こうした子どもの認識をベースにした教材開発,授業研究に取り組んでいます。

 

kumode_masafumi
口分田 政史(Masafumi Kumode)
プロフィール
専門:数学教育学
略歴:京都教育大学大学院(教育学研究科)修士課程修了。京都府の公立高等学校に2年(非常勤),滋賀県公立小学校に7年の勤務を経て現職。専門は数学教育学。研究テーマは,学校数学(算数)の教材・教育内容・カリキュラムの開発,効果的な授業研究の在り方など。