あの日の涙

2017年12月1日 投稿者:白石 雅紀

「本気になれ!全力で取り組め!」

「自分で自分の限界を、可能性を狭めるな!」

 

 私がラグビーを始めた高校時代、当時の監督から散々言われた言葉です。当初は「監督のたわごと」とし、聞き流していました。そんな私ですから、練習で新たな取り組みをしようとしても、取り組む前から「こんな難しいことはできないだろう」などと思っていましたし、格上の相手と試合する前も「どうせ負ける」と思っていました。当時の私はラグビーに対して本気で取り組んでおらず、適当で、どこか冷めていました。

 そんなあるとき、公式戦で格上相手にボロ負けすることがありました。私自身、格上相手に初めから勝てると思っておらず、それまでの練習にも本気で取り組んでこなかったため、ボロ負けしても悔しい思いはしませんでした。むしろ「怪我しなくてよかった。明日の休みは何をして遊ぼう」などとふざけた気持ちが先に立っていました。ですがそんな私の横で、友達であるチームメイトが本気で悔しがって号泣していました。号泣している彼の姿を見て、ある意味冷めていた自分がなんだか恥ずかしく思えたことを良く覚えています。

 以降、いきなりは変われませんでしたが、「本気になる」ことを意識して日々を過ごすようになりました。本気になって物事に取り組んでみて、私自身気づいたことがあります。「自分は思っていたよりもできる」ということと、「本気を出すと成長する」ということです。以前は自分の中で「できること・できないこと」を勝手に決めつけ、「できないこと」は極力避けていました。ただ、自分が「できない」と思っていたことでも、全力で取り組めば「可能性が見えてくる」ことに気づきました。また、全力で様々な物事に取り組んでいるうちに、以前できなかったことができるようになり、自分が成長しているという実感を得ることができました。その時にようやく、前述の監督の言葉の意味を理解することができたように感じ、以降は監督をはじめ、他人の言葉は聞き流さないようになりました。

 結局私は高校卒業後、大学でもラグビーを続け、大学院時代もプレーヤー兼コーチとしてずっとラグビーに携わってきました。正直に言って未だにラグビーが好きかどうかと言われると、良くわからないというのが本心です。ラグビーは痛いし、きついし、汚いし、臭いし、怖いスポーツです。そんなラグビーですが、ラグビーが今の私を形作った重要な要素であることは間違いないと思います。そして、これだけ長くラグビーを続けることになったきっかけは、間違いなくあの日に見た友達の涙です。

 私は本年度より東京未来大学に着任しましたが、先日行われた三幸フェスティバルでの学生の涙が、あの日の友達の涙と重なり、当時のことを久しぶりに思い出しました。三幸フェスティバルでの学生の涙は私の友達の涙と同じ、「本気になって取り組んだ結果の涙」だと思います。漫然とした生活を過ごしているとなかなかあの類の涙を流す機会はありません。三幸フェスティバルでの体験が、あの涙が、学生自身の成長と自らの可能性を広げるきっかけとなればと思います。

 

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白石 雅紀(Masanori Shiraishi)

プロフィール

専門:社会福祉、国際福祉
略歴:岩手県立大学社会福祉学部卒業、岩手県立大学社会福祉学研究科博士後期課程修了、秋田看護福祉大学社会福祉学科助教、修紅短期大学幼児教育学科講師