英語の発音練習(応用編):安倍総理とアンパンマンの「ご縁([en])」

2018年2月23日 投稿者:宅間 雅哉

こども心理学部の英語教育では、音声面のトレーニングを重視しています。1年次春学期の必修科目「英語 I」、秋学期の必修科目「リスニング」では、英語の発音と聞き取りの基礎を学びます。本学の一般入試「英語」は、2013年度以降、すべて発音に関する問題で始まります。これは、「未来大に入ったら、英語は『英語の音の世界』で学ぼう」という授業担当者の基本姿勢を表明するものでもあります。

 

英語の子音の中には、日本人には発音がむずかしいとされるものがいくつかあります。lightの[l]、motherの[ð]、fiveの[f]と[v]などが代表的でしょう。しかし、意外にむずかしいのが[n]の発音で、特にsenseのnのように語中(単語の中間の部分)に生じる[n]は、なかなか身に付きません。なぜでしょうか。実は、母語である日本語が英語の[n]の習得を妨げているのです。

 

英語のnは、単語のどこに生じても[n]で発音され、上の前歯の歯茎の裏側に舌先をつけて、鼻から息を出します。これに対して、語中に生じる日本語の「ン」には4通りの発音の仕方があり、直後にどのような音が続くかによって使い分けるのです。

 

アンパンマンと彼のなかまの名前で見てみましょう。ダ行音が続く「てどんまん」の「ん」は[n]、パ行音が続く「アパンマン」の「ン」は[m]、ガ行音が続く「ささだごちゃん」の「ん」は[ŋ]、そしてサ行音が続く「ウーロさん」の「ン」は[ɴ]となります。大切なのは[m][ŋ][ɴ]の発音では、[n]と違って、上の前歯の歯茎の裏側に舌先は接触しないという点です。

 

私たちは普段、日本語の音の世界に慣れているため、英語senseのnを、どうしても[ɴ]で発音してしまいがちです。それは直後に[s]が続き、まさしく「ウーロンさん」と同じ状況になっているからです。もしsenseのnを正しく[n]で発音すれば、[n]と[s]の間に[t]の音が自然に出現し、sen(t)seのような音になります。[n]の発音が終わって舌先が歯茎の裏側から離れた瞬間に、破裂音[t]と同じ効果をもたらすからです。これは余剰子音と呼ばれます。

 

安倍総理のお名前、「晋三」さんの中の「ん」は、直後にザ行音(サ行音の有声化)が続きますから、はやり[ɴ]で発音します。しかし、Shinzoとして英語の音の世界に持ち込み、正しく[n]を発音すれば、直後の有声子音[z]の影響で余剰子音[t]も有声化して[d]となり、Shin(d)zoのような音になる、([n])ですよね、トラ([m])プさ([ɴ])。

 

takuma
宅間 雅哉(Takuma Masaya)
プロフィール
専門:英語学(史的研究)、イギリスの地名研究
略歴:国際基督教大学大学院教育学研究科博士前期課程修了。山梨英和大学教授を経て、2012年より東京未来大学教授。