苦手を「気にしない」は「気になる」になる?

2018年6月22日 投稿者:日向野 智子

 誰にでも,苦手なものがあったり,苦手な人がいたり,苦手な対象の1つや2つはあるものだと思います。苦手なものや人のことを考えないようにする、苦手を意識しないように努めることがありますが,このような方法は、苦手意識の軽減や克服につながるのでしょうか。
 たとえば,人前での発表が苦手な人に、発表前には「苦手意識を捨てるんだよ」とアドバイスをしたり、発表がうまくいかなかったときには「気にするな」と声をかけたりすることがあります。このような声かけの仕方は、苦手意識をよりいっそう強めてしまうそうです。
 これは、思考抑制の逆説的効果といわれる現象と関連しています。思考抑制の逆説的効果とは、あることがら(思考)を考えないように努力するほど、そのことがらに関連した思考が頭に浮かびやすくなってしまう現象のことです。たとえば、苦手なクラスメイトのことを考えないようにしようと努めるとします。考えないようにするためには、頭に浮かんでくるクラスメイトの顔や行動を抑えこもうと、多くのパワーを要します。また、考えないようにしているときには、なぜか、そのクラスメイトの声や話題が耳に入りやすくなってしまうものです。
 このように、考えないようにしようと強く思うほど、苦手なものや苦手な人のことが気になってしまうという悪循環に陥ることがわかっています。これとは逆に、苦手なものや苦手な人のことが頭に浮かんできたとしても、無理に消し去ろうせずに自然にまかせておいたり、別のことを考えるようにしたりするほうが、苦手なものや苦手な人に関連する思考は増幅しないようです。
 問題から意識をそらしても何も解決しないように思われがちですが,苦手であることを気にしない、考えないようにすると,かえって苦手意識を高めてしまうこともあります。そのため,時には苦手なことや苦手な人から意識をそらし,気を楽にすることをおすすめします。

 

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日向野 智子(Tomoko Hyugano)

プロフィール
専門:対人社会心理学
略歴:2003年、昭和女子大学大学院生活機構研究科博士課程修了(学術博士)。東洋大学21世紀ヒューマン・インタラクション・リサーチ・センターPD、立正大学心理学部特任講師を経て、2013年より現職。