心と身体のつながり

2018年7月20日 投稿者:藤本 昌樹

 わたしは、発達心理学と臨床心理学を専門として大学の授業を行なっています。
 発達心理学というのは、人がお母さんのお腹の中で受精して、誕生してから死に至るまでのプロセスを心理学的に研究する領域のことを指します。また、一方で臨床心理学というのは、人の生きる間に起こる様々な心理学的な問題、つまり気分が落ち込んだり、人との付き合いがうまくいかなかったりする問題を、カウンセリング、心理療法などをつかって改善したり、また、そうした問題の成り立ちを研究したり、また、予防的な研究を行うことをします。

 

 この2つは、実は非常に関係がある領域です。人が発達するにつれ、その個人の持つ問題は、色々と形や見え方が変わってきますし、ある年代に特有の問題もあるからです。子どもの場合には、児童虐待や不登校の問題、勉強などの問題などがあるということがわかるでしょうし、大人の場合には、形を変えて、職場での適応、夫婦の問題などもあるわけです。
 そして、これらの問題についての本質を考えてみると、多くの場合、人と人との関わりが上手くいかないという事が問題となっていることが非常に多いように思います。

 

 この人との関わりのスタートは、誕生後の人間関係によって形成されます。たとえば、十分に面倒を見てもらえて、愛情を受けて育った場合には、自分は愛される価値があると思えるでしょうし、周りの人や環境も信頼できるという感覚が育つでしょう。逆に、適切な面倒を見てもらえず、大切にされなかった場合、自分自身の存在や価値について疑問を抱く可能性もありますし、周りの人のことも十分信頼できないという感覚が育つ可能性もあります。

 

 この感覚の発達は遡って考えてみると、乳児期の言葉が話せなかったり、覚えていると自覚する以前の感覚的な記憶が起点となっているわけです。この感覚的な記憶は、言葉では言い表せないものですから、身体的な感覚の記憶とも考えることができます。おそらく、そうした言葉で言い表せない、言語化できない記憶があるだろうと考えられるわけです。

 

 普通に生活していても、嫌なことを考えてみると、胸や胃のあたりに嫌な感覚がよみがえってくることというのも経験したことがあるかと思います。つまり、今現在起きてないこと、昔の事だとわかっていても身体はその時のことも覚えているとも言えるのではないでしょうか。もちろん、これは悪ことばかりではありません。楽しいことを思い出せば、身体も自然と楽しかった時の事を思い出すというわけです。
 つまり、これは心と身体が繋がっているということを示しているといえます。そして、これを臨床心理学に応用して考えて行くと、身体を利用して、身体の神経系の反応を軽減したり、調整しやすくする事で、トラウマと言われるような問題も解決することができるのです。

 

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藤本昌樹(Masaki Fujimoto)
プロフィール
専門:臨床心理学、発達心理学
略歴:東京学芸大学大学院心理学分野修了、東京医科歯科大学大学院修了。博士(看護学)、臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士。子どもから成人の心理療法を現場で実践している。