第12回 海外で暮らす日本人の”ポジティブ・シンキング”とモチベーション

投稿者:田中 真奈美

私は1985年1月から2007年3月までアメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに住んでいました。高校を卒業後、大学留学をするために渡米しました。その後縁があったのでしょうか、22年間サンフランシスコで暮らすことになりました。サンフランシスコには日系人、日本人が多く住んでいます。アメリカ本土への移民の玄関口でもあったため、現在でも日本人町があり、独特の日系文化がある町でもあります。 渡米当初から多くの日系人や長期滞在をする日本人と知り合い、初めての海外生活で分からないことだらけの時、色々と助けていただきました。そうした繋がりを持つうちに、長期滞在をする日本人にはある特徴があることに気が付きました。私が知り合った多くの長期滞在をする日本人は女性が多かったのですが、皆さんいい意味で自己主張が強く、個性的で、そして自身をとても日本人だと思っているのです。確かに日本的な生活を維持している人が多いです。日本食を中心とした食生活ですし、テレビジャパンというケーブルTVを始め、日本のテレビ番組のビデオなどをよく見ていますし、日本語の本を読んでいます。しかし、言いたいことをはっきりと言うし、会話の中にはよく英語が混ざります。私からはどう見ても日本人とは違うと感じました。私は、彼女たちが自身を日本人と断言している、その心の拠り所はなんなのかを考えるようになりました。

 

海外で暮らす日本人の"ポジティブ・シンキング"とモチベーション

 

大学を卒業し、大学院へ進学し、国際・他文化教育学を専攻し、あるクラスの課題で日系一世の人をインタビューする機会を得ました。その当時で80代後半の男女2人ずつにインタビューをしたのですが、その時の1人の女性の言葉が今でも忘れられません。「私は息子達にマッカーサーと東条英樹に感謝しろと言ってきました。二人が戦争を始めてくれなかったら、息子達は大学には行けなかったのだから。」戦争時の強制収容の賠償により、日系人は大学へ無償で行けるようになったことを彼女はそう表現してくれたのです。インタビューをした当時、私は渡米して5年目ぐらいで、まだ日系人の歴史をよく理解しておらず、彼女の言葉の重みを理解できませんでした。

 

彼女の言葉の意味が分かるようになってきたのは、大学院博士課程を修了し、働くようになってしばらく経ってからでした。学生ではなく、社会人としてアメリカ人と関わるようになってから、「日本人」であることを意識させられる場面がたくさんあったのです。就職の時も日本人であり、英語がネイティブでないということで、採用されないこともありました。人生で初めて差別を感じ、マイノリティーであることを思い知らされました。悔しい思いをする時もありました。しかしそんな時、学生時代に出会ったたくさんの長期滞在者の日本人のことと、日系一世の女性彼女の言葉を思い出し、気が付いたのです。

 

そうです,”ポジティブ・シンキング”です。長期滞在の日本人ならば、海外生活の中では色々な苦労があったと思います。もちろん、差別体験もあったでしょう。そんな時、「自分は日本人だ」と思うことにより心の拠り所ができ、前向きに考えることができ、乗り越えられてきたのだと感じました。日系一世の女性は、第二次大戦中は強制収容所に入れられました。それは、私達には想像のできない生活だったと思います。努力して築いた財産はすべて取り上げられ、終わりのみえない収容生活を強いられたのです。辛くなかったわけはないと思います。収容所を出てからも、財産は既になくしていたので、また一からのやり直しをしなければなりませんでした。それでもそんな生活を「息子達が大学へいけた」とプラスに考えることによって、辛さを乗り越えてきたのだと思いました。私は、困難を乗り越える気持ちの切り替えを先輩である日系人・日本人から教えてもらいました。Tomorrow is another dayです。嫌なことがあった日は、次の日はいいことがあると考え、「日本人はダメだ」と思われないように、頑張ろうと思うようになりました。

 

海外で暮らす日本人の"ポジティブ・シンキング"とモチベーション02

 

もう1日しかないと思うのとまだ1日もあると思うのではまったく違ってきます。「どうして自分ばかり辛い目にあうのだろう」と思うより、「自分より大変な人もたくさんいる」と思うほうが、前向きに考え、行動することができます。 実は、ほんのちょっと見方を変えるだけで、誰でもポジティブ・シンキングはできるのです。嫌なことを数えるより、良いことを数えましょう。それだけで気持ちが変わります。気持ちが変わると、毎日が楽しくなります。そうすると、色々なことが好転し始めます。 ぜひ皆さんも試してみてくださいね。

 

田中真奈美
田中 真奈美 (Manami Tanaka)
プロフィール
幼稚園から大学まで幅広い教育経験を持つ。研究分野は在米22年の経験を活かし、異文化間教育、異文化間コミュニケーション、アイデンティティ、異文化適応など。