第88回 「企業は人なり」は、経営の神様の言葉

投稿者:郭 潔蓉

 かつて経営の神様と称えられた松下幸之助氏の名言のなかに「企業は人なり」という言葉がある。松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)を一代で築き上げた同氏が残した名言は数々あるが、中でもこの言葉は今でも経営学を学ぶ人々の心を捉えてやまない。
 企業にとっての最大の資産は、今も昔も「人」であることは変わりない。それゆえ、技術が革新的に進んだ現代においても、企業にとって「人材育成」は常に最重要課題となっている。自発的に行動する優秀な社員で構成される企業組織と、そうでない社員で構成される企業組織では、仕事における作業効率も生産性も異なってくる。そこで注目をされているのが行動科学的アプローチである。
 一見すると、「行動科学」と「経営学」ではつながりが見えづらいように感じるが、元来人間の行動を学問的に研究する行動科学の考え方は、企業における組織運営や従業員のマネジメントだけでなく、マーケティングといった分野にも応用が可能である。このように行動科学のアプローチを「組織」や「人」の管理に応用した手法は「行動科学マネジメント」と呼ばれており、経営管理や消費者行動調査の現場においても活用されている。
 21世紀に入ってから、世界の至る所でグローバル化が加速している中、外国人労働者の増加と共に日本企業も人材が多様化し、組織の多文化化が進んでいる。その一方で、海外に市場が広がることによって消費者も同様に多様化している。こうした変革の時代にこそ、「人」の行動を知り、経営活動に活かしていくことは大変重要なことである。
 そして、この流動的な変革の時代において、経営学領域の学問を学びたいという人にとって、行動科学的なアプローチを学ぶことは、まさに「鬼に金棒」であると言っても過言ではない。それどころか、むしろ経営の神様の言葉の真意に近づけるのではないだろうか。

 

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郭 潔蓉(Iyo Kaku)
プロフィール

専門:東・東南アジア地域の政治経済、国際経営環境分析
略歴:ボストン大学大学院国際関係学専攻修士課程、筑波大学大学院社会科学研究科博士後期課程修了、博士(法学)。代表著書に『グローバル教育の現在』他。