第90回 覚えるってどういうこと?-丸暗記と意味理解-

投稿者:小林 寛子

新学期が始まりました。我が家では,中学生になった娘(歴史好き)が,新しくもらった社会の資料集に興味津々です。
読みふける娘を真似て,小学5年生の息子は理科の教科書をパラパラ。
「メダカの勉強をするんだって!」とワクワクしています。
 
娘 :「理科かぁ。覚えることがたくさんあって大変な気がするけどな。」
息子:「なんで?理科は考えればわかるじゃん。社会の方が覚えることいっぱいあるよ。」
娘 :「歴史は全部つながっているもの。覚えるのはそんなに大変じゃないよ」
息子:「?」
 
あらあら,ちょっとおもしろい話になってきました。
 
皆さんは「理科は覚えることが多くて大変」派ですか? それとも「社会は覚えることが多くて大変」派?
 
私は,教育心理学,その中でも,子どもの学びを研究し,よりよい教授法を考えるという分野の研究をしています。大学院生時代,私の恩師は以下のようなことをおっしゃっていました。
 
「文系の学生に聞くと,理科などの理系科目は覚えることが多くて大変だと言い,理系の学生に聞くと社会などの文系科目は覚えることが多くて大変だと言うんだよ」
 
これは一体どういうことでしょう?この疑問に答える鍵は,私たちは「覚える」というときに「丸暗記」をイメージしているということです。文系科目にしろ,理系科目にしろ,教科書を丸暗記するのは大変なことです。
 
しかし,たとえば,理科が好きで,教科書にかかれている法則や公式の成り立ちをしっかり理解している人は,それを応用して別の法則を導いたり,いろいろな問題を解いたりすることができます。一方,社会が好きな人は,歴史上の様々な出来事を年号とあわせてひとつひとつ丸暗記しなくても,出来事の意味を考え,他の出来事と関連付けて理解し,推論することができます。得意な科目については,実は丸暗記はしていないのです。だから,「覚えることが多くて大変だ」と思わないのでしょう。
 
教科書を開けば覚えなくてはいけないことがたくさんあります。それらをよりよく覚えようとするときには,丸暗記するのではなく,意味を理解しようとすることが大切です。先の例のように,私たちは得意なこと・好きなことでは意味を理解するという学習方法を自然にとっているわけですが,どうも苦手だと思うことでも,意味を理解しようとしてみてください。なぜそうなるのかわかったと思った瞬間に,その他の関連する事柄についても理解が進むはずです。
 
さてさて,私の子どもたちにも,どうしたらよりよく覚えられるのか,教えてこなくては。特に,娘には理科の,息子には社会の覚え方の教授が必要なようです。それぞれ得意な教科が違うようですから,得意な教科の理解の仕方を教え合ってもらうのもいいかな。
 
 

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小林 寛子(Hiroko Kobayashi)
プロフィール
専門:教育心理学
略歴:東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学後、日本学術振興会特別研究員PDを経て現職。博士(教育学)。学習上の不適応の問題に、個別指導や授業改善を通して取り組んでいる。