第92回 年を重ねることは「幸せ」ですか?

投稿者:島内 晶

突然ですが、次にあげる言葉の〇〇には共通の語句が入ります。
どのような語句が入ると思われますか。(〇〇は二文字とは限りません。)
 
「ハッピー〇〇」、「ポジティヴ〇〇」、「プロダクティヴ〇〇」
 
お分かりになりますか。これはどうでしょうか。
 
「サクセスフル〇〇」、「アンチ〇〇」
 
最後のところで、「もしかして?」と思われたかもしれませんね。
答えは、「エイジング」です。つまり、「加齢」を意味する言葉です。
 
ところで、みなさんは、加齢、つまり「年をとる」ことに対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
おそらく、あまり良いイメージをお持ちではないかもしれません。
長寿を祝うことがある一方で、身体・認知機能の低下、ネガティヴなライフイベントの増加などといった、
加齢のもつマイナスの側面は受け容れ難いのが正直なところかと思われます。
先ほどあげた「アンチエイジング」について謳った商品を目にすることも決して珍しいことではなく、
「なるべく年は取りたくない」、「-5歳を目指そう」、「いつまでも若々しくいたい」、
そう思うことも決して不自然ではないようにも思われます。
このように述べていきますと、高齢期をポジティヴな感情をもって過ごすということが難しく感じられるかもしれません。
 
私たちは、どのように「年を重ねること」と向き合えばよいのでしょうか。
そこでヒントになるのが、様々なエイジングのとらえ方です。
プロダクティヴ・エイジングとは、「生産的老い(収入にはならないかもしれないが市民として価値ある活動ができるという考え)」を指す言葉です。
そして、「サクセスフル・エイジング」は「成功した老い」とされ、生産的・自立的であり、社会貢献を成す老い方を指します。
つまり、加齢の否定的な側面だけではなく、ポジティヴ・エイジングの意味する「老いの肯定的側面」を捉えていこうとする考え方が高齢者心理学の分野では提唱されています。
 
現在、90歳以上の高齢者や百歳以上の方が増えています。
この年代の多くの方は、誰かの支援を受けずに自立して生活をすることが困難であり、介護が必要となります。
そのような状況でも、たとえ身体が動かなくなっても、他者から見てどうかではなく、
本人が、主観的なポジティヴ気分を維持できるか、ひいては「幸せ」を感じていられるかどうか、そ
れがこの年代を生きぬくためには大切になってきます。それがハッピー・エイジングの考え方です。
誰しもが年をとることは避けられませんが、ハッピー・エイジングの考え方は、これから高齢者になっていく年代にも、そして、高齢者の中でも比較的若い年代にとっても、年を重ねることに対しての心づもりを示してくれているように感じます。
 
 

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島内 晶(Aki Shimanouchi)

専門:生涯発達心理学

略歴:明治学院大学大学院心理学研究科博士後期課程修了。(地独)東京都健康長寿医療センター研究所(旧、東京都老人総合研究所)研究生、群馬医療福祉大学社会福祉学部准教授を経て、現職。