第22回 夢をつなげていく方法-夢が現実となったときに少しの注意を-

投稿者:小林 寛子

みなさんは,将来,どんな人生を歩みたいですか?

 

「広告業界に就職して,商品のプロモーションを企画したい」,「公務員になって,日本の活性化に貢献したい」,「教職に就いて,子どもを支援したい」,さらに,「私生活では,明るい家庭を築きたい」などなど,夢が広がっていくことでしょう。広がる夢は,ひたすら明るく希望に満ちていて,「この夢が全て叶ったら,毎日充実していてどんなに楽しいだろう」とわくわくしますね。

 

しかし,夢が現実になると,想像していなかったような問題も出てくるものです。もちろん,夢が叶うことは素晴らしいことで,その素晴らしさに比べれば,出てくる問題は些細なこと。そうは言っても,些細な問題をクリアしていかなければ,現実を暮らしていくことはできず,ひいては夢破れてしまうかもしれません。私のコラムでは,私の経験から,些細な問題へ対処して夢をつなげていく方法を少しだけご紹介できればと思います。

 

自分のことを語るのはちょっと恥ずかしいのですが,私は大学生のとき,「大学院に進んで,教育心理学の研究を続けたい」と思っていました。同時に,「お母さんになりたい」とも思っていました。そして,とても幸運なことに,大学院試験に合格して研究を始めるかたわら,結婚して2人の子どもに恵まれました。夢が叶いつつあることに心躍らせ,「仕事も家庭も両立させる!」と意気込んだものの,……現実はなかなか大変なものでした。

 

まず,研究する時間がとれません。私は大学院を休学し,2歳の娘と0歳の息子を保育園に入れずに,研究するのは子ども達が寝ている時間のみと決めていました。それでも,夜よく寝てお昼寝もしてくれる子ども達であれば,研究時間は取れるはずだったのです。しかし,私の子ども達はなかなか寝ない子でした……。0歳の息子が夜泣きをし,午前2時頃から断続的に朝まで泣く日もありました。昼は2歳の娘が元気です。お昼寝の時間に息子を寝かしつけても,「弟が寝ているときこそママを独占できるチャンス!」と全く寝ません。そのため,午後9時に子ども達が寝ついてからが研究時間になりましたが,2時間が限界です。何せ,午前2時には息子の夜泣き攻撃が始まるのですから……。「だめだなぁ」と落ち込むこともたびたびでしたが,「今は小さな一歩でしかないけれど,この積み重ねが将来の成果につながっていくんだ」と,遠い将来を展望して少しずつ進むよう心がけました。

 

また,周囲の方の力を借りなくてはできないこともたくさんありました。息子が生後4ヶ月の頃,学会でシンポジウムに参加させていただいたときのことです。息子が生まれる前にお話をいただき,「娘が生後4ヶ月の頃は,ミルクもよく飲んで,パパが面倒を見ていても大丈夫だったから」とお引き受けしたのですが,生まれてきた息子は哺乳瓶を受け付けない子でした……。そのため,息子を学会会場に連れて行き,シンポジウム直前・直後に会場の受付裏で授乳することになりました。落ち着かない場所で,「今飲まないとしばらく飲めないから!」と強要された息子は災難だったと思います。また,状況を知って,学会に参加できるように考えてくださった研究者・学会会場の方々・家族にも大変な迷惑をかけました。迷惑をかけたことは反省すべきことですが,そうした方々のおかげで乗り越えられた問題は,この学会騒動以外にもたくさんあり,今も心から感謝しています。

 

他にもいろいろなことがありました。当時の大問題も,振り返ってみると些細なことに思えます。問題に対処していく上で大切だったことは,柔軟に対応策を考えることだったと思っています。また,1つ目のエピソードで述べましたように,問題にとらわれていると大きな夢が見えなくなってしまいますので,時折長いスパンで物事を考えることも心がけていました。それから,2つ目のエピソードにありますように,助けてくれる方々の存在がとても重要でした。助けていただいた分,自分も誰かを助けていきたいと願っています。

 

コラムを書いている今,ちょうど新年度が始まろうとしています。この時期,多くの人に,多くの夢が広がっていることでしょう。皆さんが,その夢を大切にされますように。そして,夢が現実になったときに起きる些細な問題に負けずに,おおらかに夢をつないでいかれることを心より願っております。

 

小林寛子
小林 寛子(Hiroko Kobayashi)

プロフィール

東京大学大学院教育学研究科博士課程単位修得満期退学後、日本学術振興会特別研究員 PDを経て現職。専門は教育心理学・認知心理学。考え方や学び方に困っている人と一緒に、改善策を考えていきたいと思っています。