第29回 大学時代の思い出と異文化理解

投稿者:田中 真奈美

私は高校を卒業後、カリフォルニア州サンフランシスコ市にある私学のサンフランシスコ大学に入学しました。留学前に英語の勉強はしましたが、入学当時は授業についていける程の英語力はなく、ESL※の英語クラスを受講しながら、一般教養のクラスを履修していました。

 

英語のクラスは全員が留学生ということもあり、リラックスしながら、英語を学ぶことができました。先生はとてもフレンドリーな人で、アメリカ独特の表現も色々と教えてくれました。直接的にnoと言わない方がいい場合は、I don’t think soという表現を使った方がいいことを教えてもらったのもこのESLの授業でした。

 

大学生活では、日本との違いをたくさん経験しました。まず、学生と先生が名前で呼び合うことです。これはなかなか慣れることができず、いつもDr. —かProfessor—と呼んでいたら、ある日、アドバイザー(アメリカの私の出身校では一人一人に担当のアドバイザーがいました。履修の仕方を始め、色々なことに相談に乗ってくれます。)に、「真奈美、敬称で呼ぶことは日本の文化だということは、分かるよ。でも、ここはアメリカだし、ここにいる時は、アメリカ式を学ぶことも大切だと思うよ。僕は君のアドバイザーだし、もっとフランクな関係でもいいと思うよ」と言われました。その時に気がつきました。授業中やある程度公の場面では、先生達は私達を呼ぶ時に、MissやMrを使っていたのです。クラスメートもいつも名前で呼ぶのではなく、必要な時は、Dr. —かProfessor—を使っていたのです。TPO time place occasion をちゃんと使い分けることの大切さと使い分けられるスマートさを教えてもらいました。今では、ある程度使いこなせるようになっているので、できなかったことがとても不思議です。逆に砕けすぎないように気を付けています。

 

もう一つは、授業中に飲食が禁止でないことでした。一番驚いたのは、足を前の椅子に投げ出して、ハンバーガーを食べながら授業を受けている学生を見た時です。でも、彼はちゃんと授業を聞き、質問もしていました。授業に積極的に参加したのです。クラスメート達も特に不快に思っていないようでした。もちろん、この学生は授業が始まる前に、ちゃんと先生の許可を取っていました。とても不思議な経験でしたが、これは価値観の違いだとその後分かりました。お腹が空いたままで授業を受けても集中できない。それなら、食べながらでもいい。大切なことは授業を聞き、参加していることなのです。ほとんどの学生と先生が授業中は何か飲んでいました。一番多かったのは、コーヒーです。眠気を覚ます意味もあったと思います。私もアメリカで教えていた時は、いつもマグカップにコーヒーをたっぷり入れて、持参していました。付け加えておきますが、言語系のクラスでは、ガムを噛むことも、ものを食べることも禁止されていました。これは、発音の練習など学生が発言することが多いからです。

 

アメリカの大学が羨ましいと思いますか?でも、大切なことは文化と価値観の違いがあるのだということを忘れてはいけません。アメリカ式がいいからと表面だけを取り入れても意味はありません。アメリカでは多くの学生が自分で授業料を支払っています。奨学金を借りたり、ローンをしたり、アルバイトで稼ぎながら、通学をしています。ですから、授業を受けるモチベーションもとても高いです。飲食をしていてもそれに気をとられて、授業を聞かないことはほぼありません。もちろん、授業中に寝ていたり、私語をしている学生もいません。幼少の頃から、自立するように育てられているからです。行動の後ろには意味付けとなる文化があり、文化にはそれを支える思想があります。それを理解することが大切です。もし、アメリカ式の授業中に飲食する習慣を取り入れたいのであれば、アメリカの学生と同様に自立心を持ち、授業に積極的に参加することも取り入れる必要があります。

 

グローバル化が進んでいる現在、異文化との接触がなく生活することは難しくなっています。日本とは違う行動や価値観に出合った時は、ぜひその後ろにある文化を考えてください。皆さんの世界観が広がりますよ。

 

※ESL・・・English as a Second Languageの略。英語を母国語としていない人のための英語教育を指します。

 

tanaka manami
田中 真奈美 (Manami Tanaka)
プロフィール

幼稚園から大学まで幅広い教育経験を持つ。研究分野は在米22年の経験を活かし、異文化間教育、異文化間コミュニケーション、アイデンティティ、異文化適応など。