第41回 「エンデュアランス号漂流」

投稿者:角山 剛

「エンデュアランス号漂流」(A.ランシング/山本光伸訳 新潮文庫版が手に入りやすいと思います)という本を読んだことがあるでしょうか。
 
イギリス人のA.シャクルトンを隊長とする南極大陸横断探検隊の一行27人(その後一人の密航者が見つかり、総勢28人)がロンドンを出港したのが1914年。南極点に到達し、南極大陸横断に挑戦したものの、船が氷に閉じ込められて破壊されてしまい、遭難してしまいます。そして、船の木材から食料や生活品等々、持ち出せるものはすべて氷の上に持ち出し、犬ぞりに積み込んで徒歩での漂流が始まります。
 
遭難後の苦難の漂流がどんなものであったかは、ぜひこの本を読んでいただきたいのですが、徒歩で数百キロを移動し、さらに選ばれた数名の決死隊が手作りの小船で荒海を1,500キロ航海して、捕鯨基地のある島にたどり着き、雪山を越えるなど苦難の連続の末にようやく救助されます。その後南極に残った乗組員の救助に向かい、最終的には一人も命を落とすことなく28人全員が救助されたのでした。
 
この物語はフィクションではなく、すべて本当に起こったことです。特筆すべきはシャクルトン隊長のリーダーシップです。一人も死なせず全員を生きて帰還させるためには、慎重にして大胆な決断と行動力が必要です。17ヵ月に及ぶ生還への旅の途中、自然界からの危機や人間関係の危機など、さまざまな苦難を乗り越えなければなりませんでしたが、その都度シャクルトンは強い意思とリーダーシップで全員を鼓舞しました。
 
リーダーはどうあるべきか、困難に直面したときに強い意思がいかに大切かを、この本は教えてくれます。リーダーシップとモチベーションを考える格好の読み物といえます。冒険物語としても、一度読み始めると止まらない面白さです。私は最近安易に使われる「勇気をもらいました」という言葉が好きではありませんが、この本からは本当に、困難に立ち向かう勇気を得ることができます。皆さんにぜひ読んでもらいたい一冊です。
 
最後に、シャクルトンがこの探検隊の隊員を募るために出した新聞広告は、世界で最も有名な広告と言われています。
 
『求む男子。至難の旅。僅かな報酬。極寒。暗黒の長い日々。絶えざる危険。生還の保証なし。成功の暁には名誉と賞賛を得る。』(訳は同書解説から転載)
 
瞬く間に5千人の応募者が集まったといいます。どうです、読んであなたも心躍りませんか?
 
 

kakuyama
角山 剛(Takashi Kakuyama)
プロフィール
専門は産業・組織心理学、社会心理学。長くワーク・モチベーションに関する研究に携わってきました。産業・組織心理学会会長、日本社会心理学会理事などを歴任。現在、産業・組織心理学会常任理事、人材育成学会常任理事、日本応用心理学会理事など。