第1回 競争社会に生きる若者たちへ ~モチベーションの高い大学生活をおくるために~

投稿者:その他

私は、担当する社会学の講義のなかで、「就活(就職活動)」と「婚活(結婚活動)」の共通性について触れることがあります。考えてみれば、どちらも限られた条件の中で自分に最適と思われるパートナーを見つけるための活動ですし、実際に大学では、就職活動をうまく切り抜けた人は、結婚(恋愛)もうまくいくなどという「伝説」もあります。
就職も結婚も、いまや自身にとって最良の「パートナー」を奪い合う競争といってもよいでしょう。

 

こうした競争に身を投じる最近の若者たちは、毎日、本当に多忙です。生涯の「パートナー」を求めてあちこちを走り回っています。
就職についていえば、新卒の就職率や有効求人倍率の落ち込みに象徴されるように、厳しい就職難に直面しています。大学を出ただけで定職にありつけるという時代は、もはや完全に過去のものとなってしまいました。結婚についても同じです。昔は学校を出ればたいていの者は結婚しました。好きだとか嫌いだとかという以前に、生きていくための手段として結婚は必要なアイテムだったのです。しかし、結婚が義務でも強制でもなくなった今日の日本は、男性の平均初婚年齢が30歳をこえ、生涯未婚率も15%に達する世界有数の非婚国家になりました。「就職したい」「結婚したい」という若者にとっては、非常に厳しい競争社会の到来です。人並み以上の努力をしなければ、理想の「パートナー」を勝ち取ることは難しい。そんな社会の風潮が、若者たちの生活から余裕や落ち着きを奪ってしまいました。

 

近頃の大学生は、大学に合格したと思ったらすぐに次の課題・目標(就職と結婚)をクリアするために、さまざまな試練が課せられます。「自分が何をしたいのか」「どんな生き方をしたいのか」をじっくり考える間もなく、競争社会という緊張状態の中で、先の見えない将来に向かって走り続けなればなりません。

 

いつの頃からか、大人も、子どもも、そして若者たちも、余裕を失ってしまったような気がします。競争に勝たなければ幸せになれない、人に後れをとってはいけない・・・等々、家庭でも、学校でも、企業でも、われわれは「立ち止まる」ことなく「前に進む」ことを強要されます。さらに、周囲との比較から、自分の相対的評価や価値を自覚させられ、現在の自分の姿からかけ離れた夢や希望を周りに語れなくなってしまいました。夢や希望を堂々と語れない、自信や高い「モチベーション(=やる気・志気)」がもてない若者が増えてきた背後には、余裕や無駄をはぎ取って効率や勝敗を優先する競争社会のひずみが見え隠れします。

 

モチベーションを上げようと思っても「上げる余裕がない」「上げ方がわからない」・・・そんな若者がにわかに増えつつある今、「どうして上がらないのか?」「どうすれば上がるのか?」を、考えるための、心の、そして時間の余裕がなくなってきているような気がします。がむしゃらに前に進むことも必要かもしれませんが、こんな時代だからこそ、(大学生活を通して)一歩立ち止まって周りをゆっくり見渡してみることも必要なのではないでしょうか。たくさんの人と出会い、関わり、ボランティアや社会活動、インターンシップ、大学祭などさまざまな体験を通して、頭を柔軟にし、視野を広げておくことが、近い将来、余裕とやる気を生み出す原動力となってくれるはずです。

 

若者たちには、これから到来するであろう未曽有の競争社会を笑顔で乗り切る「気持ちの余裕」と、たくさんの体験や出会いから得られる「高いモチベーション」を持ち続けてほしいと思います。

 

 

石阪督規
石阪 督規 (Tokunori Ishizaka)
プロフィール
広島大学大学院修了後、三重大学講師、准教授を経て現職。専門社会調査士。専門は社会学。地域づくり、観光、産業振興、男女共同参画、NPO支援などの審議会等委員を歴任。多くの自治体や地域でのまちづくり、地域再生に携わるほか、キャリア教育や若者の就業支援にも取り組む。