第43回 「興味」を育てる「知識」という土壌

投稿者:小林 寛子

先日,私の所属するモチベーション行動科学部で,卒論発表会が行われました。私の2人のゼミ生も,これまで学び,追究してきた内容を,自信をもって発表してくれました。その成長した姿に,ゼミ配属が決まった2年前の2人の姿を懐かしく思い出しました。
 
「どんなことに興味がありますか?」との私の問いに,
「何年経っても強烈に印象に残っている学習ってあるじゃないですか。そういうことってどうして起こるのか,どうしたらインパクトのある学習ができるのかが知りたいです。」
と,Aさん。私は,
「インパクトっていうのは,『学習内容』が興味深くて印象に残るということかしら。それとも,『学習方法』? 例えばね,同じ教科書の内容を教えているのに,おもしろいって言われる先生とそうでない先生がいるでしょう? 教え方を工夫していたり,考えさせる時間を取り入れていたり,それが『学習させる方法』の違いね。他にも学習が印象に残る理由はたくさんあると思うのだけれど,Aさんの言う『インパクト』はどれだろうね。」
と返しました。
 
Bさんは,
「合理的な考え方ができる人とそうでない人がいますよね。どうしたら,合理的に考えられるのか知りたいと思います。」と言いました。
「合理的な考え方といっても,課題によって異なるよね。それぞれにおいて『合理的』な解がどういうもので,人はどう間違いやすいかという研究はたくさんされています。もちろん,じゃあどうしたら間違えないようにできるかという研究もあります。その中に,Bさんの知りたい答えもすでにあるかもしれないね。」
というのが,私の最初の指導でした。
 
それからしばらくの間,2人は「知識を得る」ことに励みました。テキストや論文を読むことはもちろん,日常生活の中でさまざまな「学習」や「考え方」を観察することも通して,漠然としていた自分の知りたいことをはっきりさせるとともに,その答えを探していきました。その活動の中で,2人が最初に抱いていた疑問はあっさり解決されてしまいましたが,その上でより洗練された問いを生むことができたと思います。
 
-興味があって学ぶ。学ぶことによってさらに興味が出てくる。-
この関係はとてもおもしろいものですね。私自身,人の学習や思考のメカニズムを明らかにする研究をしているのですが,よりよく考えるために「知識を得る」ことの大切さを実感しています。知識を得た先に見える世界は,それまでに見ていた世界とは異なり,より有意味なものであるはずです。
 
モチベーション行動科学部では,心理・コミュニケーション,経営,教育といった3つの領域の知識を幅広く学ぶことができます。皆さんもここでたくさんの知識を得,新たな観点で世界を見てみませんか? そこにあなたの興味を引くものが待っているかもしれません。
 
 

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小林 寛子(Hiroko Kobayashi)

プロフィール
東京大学大学院教育学研究科博士課程単位修得満期退学後、日本学術振興会特別研究員 PDを経て現職。専門は教育心理学・認知心理学。考え方や学び方に困っている人と一緒に、改善策を考えていきたいと思っています。