第44回 「モチベーション」と「イノベーション」

投稿者:その他

現在のビジネス社会において、「モチベーション」と「イノベーション」はその重要性や必要性が語られることが多いですが、その関連性についてはあまり語られていないのではないでしょうか?私は2012年に本学に来る前、リクルート社にて26年間勤務しており、そこで「モチベーション」と「イノベーション」の関連性に気づき、探究をしてきました。今回はその当時の話を紹介したいと思います。
 
リクルート社では当時、イノベーションを実現した従業員を称える表彰制度があり、全社で年間に10~20名の従業員が表彰されていました。ここでいうイノベーションとは、「新しい価値の創造」という広義のイノベーションで、例えば、新商品・新サービスの開発、新しい営業手法の開発、数年間解決困難であった問題の解決、数億円のコスト改善など、これまでにない新しい価値を創造した仕事をイノベーションとして表彰していました。
 
私はこのイノベーション賞(仮称)の受賞者50名以上とその関係者(上司や協働者)50名以上、合計100名以上の従業員をインタビューし、どうしたらイノベーションを実現できるのか、イノベーションを実現できる従業員と実現できない従業員の違いは何なのかを探究しました。受賞者はみな高いスキル(知識や技術)を保有していましたし、仕事に向き合うスタンス(姿勢や態度)も素晴らしかったですが、同じレベルのスキルを保有し、同じような素晴らしいスタンスで仕事をしていてもイノベーションを実現できない従業員がたくさんいました。また、受賞者の年齢や性別、職種や経歴、学歴や国籍もバラバラで、共通点は見出せず、これらの要素がイノベーションを実現できるか否かには関係していないこともわかりました。インタビューを通じて、イノベーションを実現できる従業員とできない従業員に唯一の違いを見出すことができました。それは「モチベーション」の高さでした。受賞者は、周囲の反対があったり、なかなか成果が出せなかったり、何度も失敗を重ねたりしても、決して諦めることなく困難を乗り越えてイノベーションを実現していました。受賞者には共通して“圧倒的に高い”「モチベーション」がありました。この“圧倒的に高い”「モチベーション」は周囲からは「覚悟」「情熱」「志」という言葉で表現されていました。曰く「彼には覚悟ができていた」「彼女の情熱はすごかった」「彼の志の高さに驚いた」…。
 
「イノベーション」を実現できる人だけが、“圧倒的に高い”「モチベーション」をもっていたのです。逆に言えば、“圧倒的に高い”「モチベーション」がなければ、「イノベーション」を実現することは出来ません。“圧倒的に高い”「モチベーション」は「イノベーション」の必要条件と言えます。
 
現在のビジネス社会において、「モチベーション」は「やる気のない社員をどう動機づけるか」「メンタルヘルスにはモチベーションが重要」というように、比較的ネガティブなシーンに関連して、その重要性や必要性が語られることが多いですが、それだけでなく多くの組織で求められている「イノベーション」を実現する必要条件が「モチベーション」なのです。モチベーション行動科学部はなかなか理解しにくい学部ですが、本学での「学び」が、現在のビジネス社会からいかに求められているかをご理解いただけると幸いです。
 
 

佐久間俊和
佐久間 俊和(Toshikazu Sakuma)
プロフィール
慶應義塾大学商学部卒業後株式会社リクルートに入社。26年間のリクルート勤務を通じて「モチベーション・マネジメント」を探求してきました。モチベーション行動科学部では、モチベーション理論と実務の現場を繋ぐ実践スキルを中心に担当しています。