第49回 人生の岐路

投稿者:田中 真奈美

初めて進路を考えたのは、中学3年生の時でした。進路希望調査書に将来の希望の職業を記入する欄がありました。私は、考古学博士と通訳と書きました。その頃、エジプトのピラミッドを始めとする古代遺跡にとても興味があり、そういうことに関わる仕事をしたいと思っていました。通訳は特に興味があったわけではなく、母が私には向いているのではと言うので、記入した記憶があります。その頃の私は、かなりの人見知りでしたので、私としては、通訳はあまり向いているとは思いませんでした。
 
その後、名古屋の進学校へ入学し、縁があって高校1年生の夏休みに、1ヶ月ほどアメリカのシカゴの郊外にホームスティに行きました。その時、アメリカの自由な大学生活に触れる機会があり、ぜひ大学はアメリカに来たいと思いました。高校3年生となり、一度は、国内の大学への進学も考えたのですが、両親を説得し、アメリカの大学へ進学することになりました。
 
大学の卒業が間近となり、これからどうするかを大学のアドバイザーと相談していた時、「真奈美はもう少しアメリカで勉強したらどう?大学には留学生用の奨学金があるよ」と教えてくれました。まだまだ勉強を続けたい気持ちのあった私は、奨学金に応募したところ、いただけることになり、大学院へ進学することができました。大学の時は、社会学を専攻していましたが、アドバイザーの勧めもあり、教育学部の教育カウンセリングを専攻し、修士号を取得しました。
 
またまた進路の悩みがやってきました。そして、またまた指導教官の勧めで、奨学金を取得し、博士課程に進学することになりました。私の出身大学は、キリスト教系のアメリカとしては規模の大きくないアットホームな私立大学です。教育学部の教授陣が親身になって相談してくださり、私の将来のキャリアを考え、国際多文化教育学を専攻することを薦められ、カウンセリングから専門領域を変更することにしました。1994年に卒業することができ、教育学博士になりました。領域は違いますが、中学3年生の時に書いた将来の夢のうちの一つ、「博士」には、なれたわけです。
 
卒業と同時に、縁があり、結婚することになりました。そして、全く想像していなかった海外で働くことになりました。アメリカでは色々な職業を経験しました。幼稚園教諭、小学校の日本語アドバイザー、高校教員、大学の非常勤講師、日本の学習塾の講師、日系メディアの営業と経理、非営利団体の事務局長などなど。そして、日本語サービスエージェントで、なんと通訳の仕事もすることになりました。そうです、もう一つの夢の通訳も少しですが、仕事としてすることになったのです。人見知りだった私は、海外生活の影響で、かなり積極的な性格に変わっていました。
 
正直、中学3年生の時に書いた将来の夢は、高校入学後、すっかり忘れていました。でも、振り返ってみると、「言霊」はあるのではと思う時があります。考古学者になりたいと中学3年生の時に担任の先生に話した時は、「学者になるっていうのは、大変なんだぞ。博士号を取れても仕事は、なかなかないと思うよ」と言われましたが、よく分かっていなかった私は、単純に自分の興味のあることに関係する職業に就きたいと思っただけでした。その後、様々な事があり、教育という別の領域を選びましたが、研究者になるという夢は、叶ったわけです。通訳という夢も、高校1年生の時にホームスティという経験を通し、アメリカ文化に触れ、縁があって海外で22年間生活することにより、仕事の一つとなりました。ある意味、声に出したことが人生に影響したのかもしれません。皆さんも叶えたい夢がある時、人に話してみるといいかもしれませんね。「言霊」が夢を実現する手助けをしてくれるかもしれないですね。
 
進学だけではなく、人生には色々な岐路がありました。その度ごとに、いつもアドバイスをくれる人がいました。私は、岐路に立った時、必ず多くの人に相談することにしています。大学・大学院時代は、その道の専門家である大学のアドバイザーには、よく相談に乗ってもらいました。そして、同年代の友人、年上の知り合いなど、できるだけ違う意見を持っている人に相談し、その中から、自分が一番「なるほど」と思うことを選択してきました。特に人生経験のある年上の人の意見は、大変貴重でした。そういう友人たちは、いつも大切にしています。定期的に会って、自分の状況を話すようにしています。そうすると、相談事があった時、スムーズに事情を理解してくれ、的確なアドバイスをしてくれる手助けになります。
 
皆さんも人生の岐路に立った時に相談できる年上の人をぜひ見つけておくことをお薦めします。
 
 

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田中 真奈美(Manami Tanaka)
プロフィール
 専門:国際多文化教育学
略歴:サンフランシスコ大学教育学部博士課程修了。サンフランシスコの保育所、小学校、高校、大学で教育経験を積む。研究領域は異文化適応の諸問題で、海外長期滞在者について研究している。