第51回 「0は素数ではありません」

投稿者:山極 和佳

こんにちは。モチベーション行動科学部で臨床心理学を担当している山極 和佳(やまぎわ わか)です。

「素数」、高校生のみなさんにとっては身近な単語でしょうか。臨床心理学が専門の教員が、なぜ数学の話をするのか不思議に思われるかもしれませんが、タイトルは中学生の私の通知表に書かれていた所見(コメント)です。私が通う中学校では、通知表に、教科ごと担当の先生が学習の習熟度や態度についてコメントを記載して下さっていました。

さて、通知表を受け取った私は数学の欄に書かれていた所見を読み、定期試験の「0は素数である」に○か×で答える問題に「○」と誤った回答をしていたことを思い出しました。

おそらく数学の先生は、「テストは終わった後も内容を復習して正しい知識を身につけるようにしましょう」(テスト返却の際、よく言われることですね)ということを伝えたかったのだろうと思います。

それに対して当時の私が思ったことは、「ああ、そうだった。(計算問題や文章問題に比べて)簡単な問題を間違えてしまったのだった」でした。そして、「0が素数であるかないかは、私にとっては“簡単(単純)な問題”と一くくりにしてしまうようなことだけれど、数学の先生にとっては重要なことなのだな」という思いでした。

はい。先生が伝えたかったことを私は、ずれて受け取っています(笑)。

当時の私がなぜずれた受け取り方をしたのかの理由をもう少し詳しくお話しすると、科目ごとの所見の欄で他の教科は、例えば国語では「現代文は~。古典は~。」とか、社会では「地理は~。歴史は~。」というように、各科目の単元ごとの学習の様子について述べられている内容でした。その中で、数学の「0は素数ではありません」というピンポイント(?)な所見は、際立っていたのでした。

また、担任の先生がほとんどの教科を教えてくれていた小学校とは違い、科目ごとに担当の先生が異なる中学校では、国語の先生は私のクラスでも他のクラスでも国語を教えていますし、数学の先生や理科の先生も同様です。そこで中学生の私は、「私たちは、いろいろな科目を勉強するけれど、先生は一日中ずっと同じ科目を教えているなんて、本当にその担当の科目が好きなのだろうな」と思っていたのでした。

時がたち、今の私は大学で臨床心理学という科目を一日中教えています。

私が心理学や臨床心理学を学ぼうと思ったのは高校生の頃で、他の学部、学問領域と迷うこともなく選びました。「なぜ」臨床心理学を学ぼうと思ったのかについて、当時を思い出して前回のブログに書きましたので、今回は、「どういう基準で選んだのか」を振り返ってみました。そして思い出したのが、高校生よりもさらにさかのぼった中学生の時の数学の先生の言葉でした。この言葉をきっかけにして、「私が、好き、おもしろい、もっと知りたいと思うものって何だろう」をいう基準で進路について考えるようになったように思います。またそれは、大学進学に限らずその後のさまざまな選択において私の頭の中には常にあったように思います。

 

何かを決める時、特に進路といった比較的大きな決断で、「もっと知りたい」はともかく、「好き」や「おもしろい」は、例えば「将来の見通し」や「物理的なさまざまな条件」に比べるとあまりに単純な基準かもしれません。もちろん、「好き」や「おもしろい」“だけ”で決めることはできないことも多いですが、一方で、人生の中での大きな決断であればあるほど、“根底”に「好き」「おもしろい」がなければ、少なくとも長く続けることは難しいのではないのかなとも思っています。

高校生のみなさんが、「好き」「おもしろい」「もっと知りたい」と思うものは何でしょうか。

 

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山極 和佳(Waka Yamagiwa)
プロフィール
専門:臨床心理学
略歴:早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程満期退学。早稲田大学人間科学部助手、東京福祉大学社会福祉学部講師、東京未来大学こども心理学部講師を経て現職。博士(人間科学)。臨床心理士。