第52回 購買のモチベーションを高める仕組み

投稿者:渡邊 隆之

最近小売店舗で買い物をする際に「○○カードはお持ちですか?」と定員さんに聞かれることが増えてきたと思いませんか?これらは一般的にロイヤルティ・プログラムと呼ばれています。飛行機に乗ればマイレージが貯まることは皆さんご存知だと思いますが、この仕組みを小売店舗で採用したものです。ただ単にポイントが貯まるだけでなく、顧客を特定し(IDを付与し)、購買内容もデータとして記録し、蓄積することによって、「誰がどのような買物をしているのか」がつぶさに把握できるような仕組みが開発されています。

 

そもそも、なぜ、このような仕組みが開発されたかと言えば、スーパーマーケットを代表とする多くの小売業では従来から大量の折込チラシを配布し、このポイントカードは更なる価格誘因を目的とした販促手段として採用されてきました。しかしながら、新聞購読世帯数は減少しつつあり、チラシの到達率(閲覧率)もそもそも高くないのですが、さらに低くなりつつあるのが現状なのです。こうした旧態依然たるやり方では効果は見込めないだけでなく、大きな社会的なロスといえます。そこで、単なる価格誘因としてのポイントカードを脱して、顧客毎の購買データに基づいて、情報発信する「one to oneマーケティング」を実践できる仕組みとして注目され発展したのです。

 

さらに、年々成長し続けるインターネットでの購入を思い起こしてください。これはカードなしでも顧客毎の購買データが収集できる仕組みに他なりません。ネット小売業に対抗するためには、店舗小売業も同様の仕組みを構築せざるを得なかったのです。顧客毎にその顧客に相応しい販促情報を提供し、よりロイヤルな顧客を育てようと意図されています。業界を超えてこの目的を達成しようとする提携(いわゆるポイント互換)も進んできました。さて、この購買データベースを活用した新しい手法の背景にあるのは、売り手が勝手に販促を考え、誰であろうが構わずに売り手の都合で売るという発想ではなく、買い手の買い方に沿って、買い手の立場から購買をサポートしてあげよう、という発想の転換です。「販売促進ではなく、購買促進を」なのです。より効果的な販売を目指すならば、より正確に購買の実態を捉え、そこから得られた知見や仮説で動機づけする。まさに一人一人の顧客に適応した「購買のモチベーションを高める」ことが現代のマーケティングなのです。

 

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渡邊 隆之 (Takayuki Watanabe)
プロフィール
専門:マーケティング、消費者行動
略歴:早稲田大学大学院商学研究科博士前期課程修了。(株)イトーヨーカ堂を経て、学習院大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。(財)流通経済研究所理事、創価大学・沖縄大学教授を経て現職。