第57回 人間の製作技術と機械のそれについて

投稿者:金塚 基

ここ東京未来大学の立地する足立区は、戦後さまざまな町工場といわれる小規模な事業所が林立していたことでも知られています。

林立していたというのは、以前と比較してその数が減少しているという意味に他なりません。詳しくはわかりませんが、住宅地としての土地利用の規制や不景気による受注件数の減少、また後継者不足などにより今後とも減少が見込まれているようです。

その一方で、依然として元気に経営しておられる町工場さんも存在しており、昨年、私がゼミ生をつれてインタヴューに訪問させていただいた製作所さんは後継者を探している様子でした。その作業場をみせていただいてまず驚くのが、コンピューターを使った機械がまったくなく、存在するのは昭和の時代からの古い製作機械が数台あるだけという光景です。

工場主さん曰く、数年前までCADなどのコンピューター製作機器を保有していたが、意味がなくなったので手放したということでした。うかがってみると、受注の質が大量製作から少量生産へと変化し、ロケットの部品などの精密な希少部品の製作へと業務内容が変わっていったから不要となったようです。

話は変わりますが、私の趣味であるサックスのマウスピースに関しても、現在の技術を用いても最終的には職人さんの手作業でその優劣が決まります。またむしろ、近年製作されたマウスピースよりも、50年前に作られたもののほうが鳴りやコントロールが良く、現在の技術をもってしても、その時代の最高のものを超えられないといわれています。おかげさまで今でもそのような中古品に大枚をはたかされる事態が続いております。

総じて現在、製作技術のみならず、あらゆる分野で人間の労働力の質を超えた機械の技術が浸透し、一方で人間の労働力としての価値は低められる傾向が強くなっています。10年後、20年後、人間の労働力としての価値が存在しうる分野はどこなのでしょうか。そうした絶対無二の価値のありかを求めつつ、日々の生活を送ることを心がけたいものです。

 

 

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金塚 基(Motoi Kanatsuka)
プロフィール
専門:教育学・生涯教育
略歴:早稲田大学教育学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(教育学)。帝京大学福祉・保育専門学校専任講師などを経て、東京未来大学モチベーション行動科学部講師~現在に至る。