第65回 「無意識の私」を知る方法

投稿者:埴田 健司

唐突ですが、質問です。あなたは、「男は仕事、女は家庭」という考え方に賛成ですか?それとも反対ですか?
私は社会心理学が専門で、ある社会的カテゴリーや集団の人々に対して抱かれているイメージや偏見に関する研究を行っています。それも無意識のうちのイメージや偏見です。「無意識って調べられるの?」と思う人もいるかもしれません。百聞は一見に如かずということで、ちょっとデモンストレーションしてみたいと思います。
下の図を見てください。よくある男女の名前と、仕事あるいは家庭に関する言葉が縦一列に並んでいます。それらを左右に分けてみてください。上のほうに黒背景で書かれているのが分類基準です。つまり、男性の名前と仕事に関する言葉は左側に、女性の名前と家庭に関する言葉は右側に分けます。

埴田先生_図1

同じようにして、次の分け方にもチャレンジしてみてください。分け方が変わっていますので注意してください。

埴田先生_図2

さて、1つ目と2つ目の分け方、どちらが分けやすかったですか?もし1つ目のほうが分けやすかったとしたら、あなたは「男は仕事、女は家庭」という考え方(専門的には態度といいます)を無意識に持っている可能性があります。まさにそうだという人が多いのではないでしょうか。ちなみに、大学生を対象に調べてみたところ、平均的には「男は仕事…」という無意識の態度が持たれているという結果が得られています。
学会でアメリカに行ったときのことです。夜ホテルに戻る道中、人気の少ないところで黒人の人とすれ違いました。そのとき、私の中でちょっとした緊張が走りました。自分が偏見がかった態度を持っていることに気づいた瞬間でした。偏見は望ましくないと思っていましたし、自分は偏見の持ち主ではないとも思っていました。しかし、どうやら私の無意識には知らず知らずのうちに偏見が埋め込まれていたようです。これが無意識の態度や偏見を研究しようと思ったきっかけです。
ここ数年で海外から日本に訪れる人は急激に増え、街中で外国の人を見かけることも多くなりました。多種多様な人と触れ合えるチャンスです。しかし、偏見がかった無意識の態度を持っていたら、外国の人とコミュニケーションをとろうとするモチベーションも上がりづらいかもしれません。こうした影響に打ち勝つための第一歩は、自分の無意識を知ることだと思います。幸いなことに(?)、無意識の態度を調べられるサイト(https://implicit.harvard.edu/implicit/japan/)もありますので、試してみてはいかがでしょうか。

 

hanita_kenji
埴田 健司(Kenji Hanita)

プロフィール

専門:社会心理学

略歴:一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。追手門学院大学心理学部特任助教を経て現職。社会的判断・行動に影響する非意識的な心理過程について研究している。