第6回 学びを支えるモチベーション

投稿者:小林 寛子

私は,教育心理学と認知心理学を専門としています。特に,教育場面で,学習者はどのように学習していくのか,それを教師はどのようにサポートするべきなのか,ということをテーマに研究を行っています。こうした専門領域から,このコラムでは,学ぶモチベーションについて考えていきたいと思います。

どうしたら「学ぼう」という意欲がわくのでしょうか? 学習が楽しい,おもしろいと思えればよいのでしょうか? 実際,楽しいこと,おもしろいことであれば,人は取り組みたくなります。皆さんも,自分の興味のあること―例えば,ゲームをする,マンガを読む等―であれば,時間を忘れて取り組みますよね。このように,活動そのものが楽しいと思って取り組んでいる状態を「内発的動機づけ(intrinsic motivation)」のある状態と言います。心理学でも,内発的動機づけの重要性は様々に指摘されてきました。

しかし,学習は,楽しいと思おうとして楽しめるものでもありません。「教科書に書かれていることは堅苦しいし,覚えなくてはならないのは苦痛だし,楽しいところなんてないよ」という人は多いでしょう。よく学習している人でも,ただ楽しいという気持ちだけで学習している人は,そんなに多くないはずです。このことは,市川(1995)の調査結果からも裏付けられます。市川(1995)では,大学生に,「勉強は何のためにするのか」といった質問に回答してもらい,その結果を下図のように整理しています。図からは,学ぶモチベーションは,内発的動機づけ―下図では特に充実志向にあたる―だけではなく,多様であることがわかります。

 

学習動機の二要因モデル

 

さらに,学ぶモチベーションは多様でよいのだというのが,市川(1995)の主張になります。ですから,「学ぶ楽しさなんて見つけられない」という人は,他のモチベーションを見つけてみるとよいのです。「これは将来の仕事に役立つのだ(実用志向)」ということでも,「友達と一緒に勉強する日を作って互いに進捗状況を確認し合う(関係志向)」のでも,また,「ここまで頑張ったら自分にご褒美をあげよう(報酬志向)」ということだってかまいません。そうして学んでいるうちに,「あ,意外と楽しい(充実志向)」とか,「結構できるようになってきたから,もう他の人には負けられない(自尊志向)」等と,他のモチベーションも生じてくる可能性があります。そうして様々なモチベーションに支えられてこそ,学習は長続きするのです。なぜなら,ある一つのモチベーションで挫けてしまっても―例えば,楽しめていたのに,難しくてわからないので楽しくなくなった等―,他のモチベーションで学習に取り組んでいくことができるからです。

以上,学ぶモチベーションについて説明してきました。学ぶモチベーションは,学習を始発し,継続させる大切なものです。ぜひ皆さんも,自分の学ぶモチベーションを考え,様々な観点から学習を支えていってください。

【引用文献】
市川伸一 (1995). 学習と教育の心理学 岩波書店

 

 

小林寛子
小林 寛子 (Hiroko Kobayashi)
プロフィール
東京大学大学院教育学研究科博士課程単位修得満期退学後、日本学術振興会特別研究員 PDを経て現職。専門は教育心理学・認知心理学。考え方や学び方に困っている人と一緒に、改善策を考えていきたいと思っています。