第70回 他者と関わろうとするモチベーション

投稿者:磯 友輝子

みなさんは、自分の意見を周りの人にうまく伝えられますか?

誰かから何かを頼まれたとき、それを引き受けたくなければ、うまく断れますか?

誰かに何かを頼まなければならないとき、相手にうまくお願いができますか?

 

「うまく」とは、相手に嫌な思いをさせないように配慮しながら、

自分の意見を伝えられた状態を意味します。

互いに気持ちよい状態で「うまく」意見を主張する仕方は、

心理学ではアサーションと言い、望ましい自己主張のスタイルとされています。

 

先ほどの問ですが、私自身はどちらかというと、Noです。

 

私はコミュニケーションに関する専門家で、

アサーションを知っていて

他者の利益のためならばアサーションができるので、

その能力もあると思うのですが、

主張の目的が自分のためだと、「ノン・アサーション」になります。

 

相手に合わせて主張を控えたり、

依頼を断れなくて引き受けてしまったり、

周囲に頼れなくて自分一人で背負ってしまったり。

こんなふうに、自分の意見を押し殺してしまうのがノン・アサーションです。

 

なぜ、アサーションをする能力があって、方法を知っていて、実践できるはずなのに、

私はアサーションが十分にできないのでしょうか?

 

それは、人との関わり不足、経験不足によるからにほかなりません。

私は他者と衝突することを避ける癖があり、積極的にアサーションを実践していないのです。

 

対人関係をうまくこなしていくコミュニケーションの力のことを「社会的スキル」と言います。

他者とうまくやっていく能力があって、方法を知っていて、実践できることです。

社会的スキルの高さは、生まれながらに決まってしまっているのではなく、

人との関わりという経験を通して学習し、高められていくものです。

アサーションもそのスキルの1つです。

 

でも、よく考えてみてください。

私が主張せずに相手の意見を聞き、頼まれごとを引き受けてしまっては、

その相手の方のアサーションの機会が減ります。

私のノン・アサーションは、相手がアサーションを経験する機会を奪っているのです。

 

自分だけでなく、周囲の人も

お互いに高い社会的スキルを持っていると非常に住みやすい世界ができあがります。

それゆえに、自分のためにも、他者のためにも、

積極的に「他者と関わろう」とするモチベーションを高める必要があるのです

 

さて、ノンアサーションのはずの私ですが、夫の頼まれごとには、遠慮がなくなり、

「忙しいのが見てわからない?!」とアグレッション(自分を優先して相手のことを考えていないスタイル)。

いくら親しい間柄でも、傷つきますよね。

家族こそよい練習相手。日々精進、と反省。

 

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磯 友輝子(Yukiko Iso)
プロフィール
専門:対人社会心理学
略歴:日本大学国際関係学部、名古屋大学文学部卒業。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。同大学院助手、本学こども心理学部講師、准教授を経て現職。