第75回 “スキルアップ”について考えてみましょう

投稿者:小林 寛子

 2018年の幕が開けました。今年は平昌冬季オリンピックが開催されます。2月9日の開会式を目前に,活躍を期待される日本選手の様子が連日報道されていて,わくわくしますね。世界トップレベルの高いスキルを,彼らはどのようにして身につけたのでしょうか。

 私が専門としている教育心理学では,学習場面でのスキルである「学習方略」の熟達過程が研究されています。研究の結果,熟達化は,①学習方略を使えない状態から,②使うけれども上手くいかない状態を経て,③複数の学習方略を場面に応じて使い分ける状態へと進むことがわかっています。例えば,学習は授業に閉じているのではなく,日常生活と関連づけていくとよいと言われますが,そうした学習の仕方は知らなければできるものではありません(上記①の段階)。また,学習方略は知ったからといって上手く使えるものではないということにも注意が必要です。どのように関連づけたらよいのか試行錯誤の時間が続きます(上記②の段階)。さらに,有効な学習方略は1つではないことを考えると,複数の学習方略について知っては試行錯誤することを繰り返して身につけ,どのような場面にもそれらを使い分けて対応できるようになることが目指されます(上記の段階③)。

 スキルの熟達過程は,学習以外の分野でも共通なのではないかと思います。スポーツでも1つの方法(例えば,スケートの滑り方やジャンプの仕方)を知り,試行錯誤の末に使いこなせるようになることを繰り返して,たくさんの方法を柔軟に使い分けどのような場面でも高いパフォーマンスを示せるようになっていくのでしょう。さらに,こうした過程は,特定の分野のみならず,モチベーションの上げ方や人との関わり方といった一般的な事柄でも見られます。各分野の第一線で活躍される方々は,このスキルも高そうですね。

 皆さんもぜひ,たくさんの「方法」を学び,実践を通して鍛えていってください。2018年が飛躍的なスキルアップの年となりますよう願っています。

 

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小林 寛子(Hiroko Kobayashi)
プロフィール専門:教育心理学
略歴:東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得満期退学後、日本学術振興会特別研究員PDを経て現職。博士(教育学)。学習上の不適応の問題に、個別指導や授業改善を通して取り組んでいる。