第78回 職務に対する満足感

投稿者:高橋 一公

 労働意欲や職務に対するモチベーションに影響を与えているものに「職務満足感」があります。何によって自分の職務行動が動機づけられているかは個々人で異なっており、職務の達成や他者からの承認によって満足を感じる場合もあれば、職場環境や待遇、対人関係などによって満足を感じることもあります。当然のことながら満足感が高まれば生産性や作業量の増大といった組織や個人へ肯定的な結果として現れることが多いのですが、逆に満足感が低くなれば生産性の低下など個人や組織に否定的な結果に結びつきやすくなるようです。
 ロック(Locke,E.A.)は、「職務満足は、個人の仕事の評価や仕事の経験から得られる喜ばしい感情、あるいは肯定的な感情である」と定義しています。これは仕事の評価などによって生じる私たちの肯定的な感情を意味していると理解できます。しかし、医療や看護、福祉、教育などの対人援助を主とする職場では働く者だけでなく、サービスを受ける側、要するに患者や要支援者、生徒・学生の感情変化によって職務満足が影響を受ける可能性があります。特に医療に関わる職場の場合、疾病や障害によって危機的な状況にある患者が持つ心理状態はセンシティブで、働く者が職務に肯定的な感情を持っていたとしてもそれが患者の肯定的な感情につながるわけではありません。このようなすれ違いは「無力感」という否定的な感情につながりやすいことも知っておく必要があるでしょう。
 
 最近、保育士のストレスに関する調査にかかわる機会があり、保育士のストレスに職務満足感が影響していることが示されました。保育士の職務満足感をどう定義するか、またどのように測定するのかという問題は残されています。しかし、待遇や労働環境の改善も当然ですが、「職場の人間関係」や「職務への誇り」、「職場からの信頼」などがこの満足感に影響を与えていることは確かなようです。
 言い換えれば、保育士も自らが職務に対して誇りを持つとともに保護者や同僚から肯定的に評価されるなど職場の良好な人間関係が職務へのモチベーションを維持するための重要な要因といってもいいのではないでしょうか。
 

takahashi_ikko
髙橋 一公 (Ikko Takahashi)
プロフィール 
専門:生涯発達心理学、高齢者心理学

略歴:明星大学大学院人文学研究科修了、一般企業にて適性検査等の企画開発に従事。その後、山梨、群馬の私立大学を経て現職。臨床発達心理士。著書に「生涯発達心理学15講」等。