第79回 2018年度アカデミー賞2部門受賞映画『ウィンストン・チャーチル』を観て考えたこと

投稿者:田澤 佳昭

 映画『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』で特殊メイクを担当した辻一弘氏が、2018年第90回アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しました。日本人が個人としてオスカーを手にしたのは25年ぶりということもあって、たいへん大きな話題となりました。
 辻一弘氏が担当したのは、主役のチャーチルを演じて主演男優賞を受賞したゲイリー・オールドマンの特殊メイクです。映画『ハリーポッターと不死鳥の騎士団』では、ハリーとともに魔法の杖を振るって戦う細身のシリウス・ブラックを演じたゲイリー・オールドマンが、教科書でおなじみのチャーチル英国首相そっくりに変身してしまったのですから驚きです。チャーチル首相は、夫人に“my pig”と親しみを込めて呼ばれてしまうほどまるまるとした顔つきだったのですから。
 この映画は、第二次世界大戦のはじめ、ナチス・ドイツのヨーロッパ侵攻が急速に展開し、世界にファシズムの脅威が迫るなか、1940年5月に英国首相に就任したチャーチルが、ヒトラーとの宥和か、徹底抗戦か、の選択を迫られた27日間を描いた作品で、安全保障を考えるうえでも興味深い作品です。
 前任のチェンバレン英国首相は、1938年のミュンヘン会談で、ヒトラーの要求をのんで戦争を回避するという宥和政策を選択しました。しかし、それが裏目に出て、増長したナチス・ドイツに開戦を思いとどまらせることを難しくしてしまい、危機管理に失敗しました。その状況下での首相就任ですから、チャーチルの苦悩も並大抵のものではなかったはずです。
 映画ですから脚色で誇張されたり、作品テーマに偏った見方が生じたりすることもあります。とはいうものの、こういった社会派の作品は、様々な文献や関係者の証言などの綿密な考証を経て作られていることが多いものです。お気に入りの映画を見つけたら、その作品の基になっている資料を捜してみてください。それが研究の第一歩になりますから。
 

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田澤 佳昭(Yoshiaki Tazawa)
プロフィール
専門:国際政治
略歴:日本大学大学院博士後期課程政治学専攻満期退学。道都大学短期大学部専任講師・同経営学部専任講師・准教授を経て現在。南シナ海・東シナ海の沖合無人島嶼・海洋境界をめぐる国際問題を研究。