第81回 サッカー・ワールドカップにおける日本代表チームの活躍

投稿者:埴田 健司

 サッカー・ワールドカップ(W杯)のロシア大会。みなさんは何試合くらい観戦したでしょうか?ほとんど見ていないという人もいるでしょうが、日本代表チームの試合は観戦した、少なくとも試合の結果をテレビやインターネットなどでチェックしたという人は多いと思います。日本代表チームは見事グループリーグを勝ち抜き、決勝トーナメントに進出しました。残念ながら決勝トーナメント1回戦でベルギー代表チームに敗れてしまいましたが、大会を通じての代表選手の活躍・雄姿には感動させられました。
 さて、ここで1つ質問したいのですが、あなたはW杯が始まる前、日本代表チームがグループリーグを突破できると予想していたでしょうか?将来の出来事について予想することは日常茶飯事です。W杯の試合結果を予想するインターネット上の書き込みも非常に多かったように思います。では、過去に行った予想を思い出すとき、私たちは正確に思い出すことができるでしょうか。
 4年前のことになりますが、2014年にはW杯ブラジル大会が開催されました。大会が始まる前、私の授業を受講していた学生137名に、何%の確率で日本代表チームがグループリーグを突破すると思うかを答えてもらいました。そして大会終了後には、大会前に自分が予想していたグループリーグ突破の確率を思い出してもらいました。その結果、大会前の実際の予想確率の平均値は59.4%であったのに対し、大会後に思い出してもらった予想確率の平均値は53.1%に下がっていました。下がったといっても少しではないかと思われるかもしれませんが、統計学的に意味のある差ではあります。
 なぜこのような差が生じたのでしょうか。出来事が起こった後で、それが事前に予測可能だったと考える傾向を後知恵バイアス(hindsight bias)といいます。結果が出た後で「こうなると思ってたよ」、(本当は言っていないのに)「言った通りだったでしょ」といった発言の裏に働いていると考えられる心理です。W杯ブラジル大会後に思い出してもらった予想が事前の実際の予想よりも低い確率で思い出されたのも、この後知恵バイアスが関わっていると思われます。日本代表チームの戦績は1分2敗で、グループリーグ敗退でした。大会後はこの結果を知っていますから、「こうなることはわかっていた」という心理が影響して、事前よりも低い確率が答えられたのでしょう。
 先に、W杯ロシア大会での日本代表チームのグループリーグ突破を予想していたか質問しました。後知恵バイアスが働いているとすれば、「突破できると思っていた」と考えている人が多いと予測されます。「やってくれると思っていたんだよ」とか、「自分は突破できると信じていたよ」などと言っている人に出会ったら、後知恵バイアスが働いている可能性を考えてみてください。

 

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埴田 健司(Kenji Hanita)

プロフィール

専門:社会心理学
略歴:一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。追手門学院大学心理学部特任助教を経て現職。著書(共著)は『エピソードでわかる社会心理学』、『とても基本的な学習心理学』他。