心理学と「かわいい」

2020年7月10日 投稿者:坪井 寿子

 本学の心理専攻は、こども心理学科(学部)のもとにあります。みなさんは、こども心理学についてどのようなイメージを持っていますか。子どもたちの心や行動に関する心理学といったところでしょうか。確かに、乳幼児心理学や児童心理学が中心的な領域になります。ただ、心理専攻では、心理学のもっと広い立場から考えていくことができます。基礎的な心理学としての知覚・認知、感情の実験的研究からどのようにかかわっていくことができるのでしょうか。

 

 1つの例から考えてみます。幼い子どもたちが楽しそうに遊んでいる様子を見ていると、多くの人は「かわいいな」と思うことでしょう。「かわいい」という言葉からは、なにかほんわかしたほのぼのとした印象を持ちます。むしろ科学的に厳密に調べることとは縁がなさそうな感じもします。でも、このかわいいについて、実験心理学の立場からのアプローチもあります。「かわいい」の研究の第一人者である入戸野宏氏は、さまざまな領域から「かわいい」について研究しています(詳しくは、入戸野宏著(2019)『「かわいい」のちから:実験で探るその心理』を参照してください)。さきほど、幼い子どもたちが…と書きましたが、私たちがとらえている「幼い」と「かわいい」は似ているようでいて違う点もあることをいくつかの実験を通して示しています。その一方で、「かわいい」の研究は基礎的なテーマだけでなく、実際の生活場面にも貢献することがあります。ちょっとした工夫で身の周りの雰囲気が和んだりすることもあります。

 

 さらに、入戸野氏は、「かわいい」というほんわかした感じのものだからこそ、きちんとした手続きで研究を進める必要があると述べています。このようなほんわかしたものに限らず、そもそもとらえどころのないものについて心理学ではさまざまな工夫をしながら調べています。そこが心理学の1つの特徴かもしれません。

 

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坪井 寿子(TSUBOI Hisako)

プロフィール
専門:認知心理学、発達心理学
略歴:学習院大学大学院博士後期課程中途退学、大学入試センター(非常勤)、鎌倉女子大学専任講師を経て本学に勤務。臨床発達心理士、学校心理士。