場や相手の存在によって紡ぎ出される言葉

2020年12月4日 投稿者:平部 正樹

 みなさん、こんにちは。心理専攻の平部です。今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、私もオンライン授業のための動画作りをすることになりました。Microsoftのパワーポイントでスライドを作成し、そこに音声を吹き込んで録音していきます。いつもの対面授業でしたら、スライドを示しながら大勢の学生の前で話すわけですが、今回はパソコンを目の前にして話しています。4月からこのような慣れないことを始めてみて一番感じたのは、「思ったよりも、うまく言葉が出てこない」ということです。もともと私は話すのがうまくなくて、対面の授業でも、聞き取りづらいと言われることがあります。それが、動画作成の音声吹き込みのためにパソコンの前に座ると、ますます頭が働かない、言葉が出てこないという状態になります。

 私自身の授業のうまいへたももちろんあるのですが、普段の対面授業の時の言葉が、私が頭で考えて口から発するだけのことで成り立っているのではないことが、改めてわかりました。まず、椅子に座っていること自体が、授業用の言葉を発しづらくしています。対面授業の時は、立って身振り手振りを交えながら話しますからね。その他にも、今日は授業があるぞと思いながら気持ちを整える通勤時間、多くの学生が行き交っている大学構内の雰囲気、教室の機材や配付資料を準備する時間、いざ教室で大勢の学生を目の前にした緊張感、そしてもちろん、授業で実際に話しているときの学生の反応など、すべてのものが合わさり、相互に作用しあうことで、私の中から言葉が紡ぎ出されてくるのだなと思いました。対面が良いか、オンラインが良いかはさて置き、場の力や聞いてくれている相手の存在の重要性を毎回実感させられる体験となっています。慣れ親しんだやり方からの変化は誰にとってもストレスですが、そこから大事な気づきが得られることもあるのかもしれませんね。

 

平部 正樹 (HIRABE Masaki)

プロフィール

専門:臨床心理学
略歴:早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了。東邦大学助手、目白大学専任講師等を経て、現職。医療、教育、産業等での心理臨床活動に従事してきている。公認心理師、臨床心理士。