心の傷、トラウマをどのように理解するか?

2020年12月18日 投稿者:藤本 昌樹

ご存じの方も多いと思いますが、「心の傷」をトラウマと呼びます。最近ではよく耳にする言葉ではないでしょうか?そして、トラウマという言葉を聞いて、自分には関係ないと思っている人も多いと思います。

 

そのような人は、トラウマというのは事故や自然災害などの死ぬような経験しない限りトラウマとは呼ばないと思っているからかもしれません。

 

一方、「○○先生に強く叱られたことは、これは私にとってのトラウマだ」と思っている人もいるでしょう。日常で誰もが経験する可能性のある、思い出すと苦い経験とか、凄くイヤな記憶といったものをトラウマと感じている人もいると思います。

 

それでは、どちらが専門的にみて正しいのでしょうか?…

 

これはトラウマの専門家の間ではどちらも正しいと考えられています。前者の誰の目からみても心理的ショックが大きいものは、トラウマ(Trauma)の頭文字の”T“を大文字で書いて”Big T”(ビッグT)と呼んでいます。

 

そして、後者の誰でも経験する可能性がある、仕事上の上司からの叱責(しっせき)や、他者からの暴言、または自分が直接経験しないでもショックな話を聞いたり、誰かが暴力を受けたのを見た経験などは、トラウマ(Trauma)の頭文字の”T“を小文字で書いて”Small t”(スモールt)と呼んでいます。

 

ビック”T”の場合には、1回の経験でもPTSD(心的外傷後ストレス障害)という病になる可能性があります。スモール”t”では、1回だけの経験では大きな心理的な問題になる可能性は低いです。しかしスモール”t”でも複数回経験すると、それだけ心身への有害な影響も大きくなります。

 

例えば、DV(父親が母親に暴力を振るわれている等)を何度も見たり、また毎日のように親から暴言を受けたりすると、その経験の無い人と比べて、脳の一部の体積が変形していることも研究でわかっています。

 

このように幅広くトラウマを認識することは、日常生活で「言葉で人を虐めている」人にとって日常の行動を省(かえり)みることにつながると思います。また同時に、実は家庭や学校で、積もり重ねてきたスモール”t”の影響に苦しむ人にとっては、自己理解を深めることにつながって適切な援助を求めるきっかけになると思います。私が最近出版した『毒親の呪いを解く音楽CDブック』(マキノ出版)も親からのトラウマ理解を深め、その影響に苦しめられている方々の助けになる本となっていますので、ご関心のある方はご覧下さい。

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藤本 昌樹 (FUJIMOTO Masaki)

プロフィール

専門:臨床心理学、発達心理学
略歴:東京学芸大学大学院心理学分野修了、東京医科歯科大学大学院修了。公認心理師、臨床心理士、社会福祉士、精神保健福祉士。子どもから成人の心理療法を現場で実践している。