シリコンバレー・ペアレンツ

2021年1月22日 投稿者:柳生 崇志

 スマートフォンを使っていると,「週間レポートがあります; 画面を見ている時間は先週から○%増えました。」と通知されることはありませんか?これは“スクリーンタイム”の機能のひとつですが,スマートフォンのスクリーンを見ている時間(≒使っている時間)をいかに管理するか,という問題は子を持つ親に共通する大きな悩みといえるでしょう。

 子どもに「携帯を持たせない」,「iPadを使わせない」,「動画やゲームの時間を制限する」…これらは世界をリードするIT関連企業のトップ,すなわちMicrosoft共同創業者ビル・ゲイツ,Apple元CEOスティーブ・ジョブズ,Google CEOサンダー・ピチャイらが発したメッセージです。3,4年ほど前から,いわゆるGAFA等のIT関連企業が集まるシリコンバレーの親たち,つまりシリコンバレー・ペアレンツが求める幼児教育・保育が注目されてきました。世界で最もITへの親和性が高いシリコンバレーで,子どもたちはIT/デジタルデバイスから距離をおき(“tech-free”あるいは“screen-free”),自然の中で,体を動かし,自由に遊ぶことが推奨されているのです。外国語・体操・プログラミングなどの早期教育の志向とも一線を画します。最先端のIT/デジタルデバイスやサービスを開発し,その利便性と危険性を熟知しているからこその教育観・保育観に,私たちはもっと耳を傾ける必要がありそうです。とくに0-2歳の間に,身近な“自然”環境に対して主体的に関わりながら自由に遊ぶ体験を保証された子どもは,4-5歳になった時に「粘り強く挑戦する」「友達と協力する」「自分や他者の気持ちとうまく折り合いをつけられる」といった“社会情動的スキル”の育ちがよくなることがわかってきました。

 2020年,コロナ禍で子どもたちのデジタルデバイスやSNSの使用時間が増えたこと,それに伴い子どもたちのメンタルヘルスの問題が増加してきたことを示す研究が相次いで報告されています。IT/デジタルデバイスとのよい付き合い方,教育や保育への活かし方を今こそじっくり考えてみるときかもしれません。

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柳生 崇志 (YAGYU Takashi)

プロフィール

専門:幼児教育学、保育心理学

略歴:東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。子育て環境と子どもの発達の関係について研究している。沖縄女子短期大学准教授を経て2020年より現職。