子どもに魅せられて(佐々木由美子先生)

2015年10月19日 投稿者:佐々木 由美子

 子どもたちに絵本を読んだことがありますか? 子どもたちといっしょに絵本の世界を旅する時間は、私にとって至福の時です。絵本を子どもたちと一緒に読むなかで、これはきっと喜んでくれるだろうと思った絵本が、まったく見向きもされなかったり、逆に、この絵本になぜこんなに大喜びするの?!と意外な反応に驚かされたりします。そのたびに、子どもの心にもっと近づきたいなって思います。私は、「児童文化・文学」と「保育」を専門としていますが、いっけん別々の領域のようなのですが、その二つは私のなかでは深くつながっているのです。子どもたちはどんな風に世界をみて、感じているのだろう。子どもたちの心をゆさぶる絵本や物語とは何だろう・・・と、子ども独自の世界や論理をいつも追い続けているのだと思います。

 

 ところで、私の所属している日本児童文学学会や絵本学会の研究発表では、大の大人が大まじめに、「ノンタンの輪郭線がどうの」「くまのプーさんの世界がどうの」と、絵本や子どもの本について議論します。私が通っていた大学院でもそうでした。日常会話のなかに、メアリーポピンズだの、パディントンだの、モモちゃんだの作品の登場人物たちが、親しい友だちのように頻繁に登場します。そんな世界に長くいたものですから、世間一般ではそんな会話はしないのだと、気づいたときは驚きました。どうやら、世間一般からみると、私は変わった人にみえるようだとも気づきました(最近は気をつけているので、変わった人には見えないと思いますが・・)。幼児教育の父・倉橋惣三も、子どもたちが街頭紙芝居に夢中になるのを見て、紙芝居の何がそんなに子どもを惹きつけるのだろうと、くる日もくる日も街頭紙芝居を見続けたといいます。紙芝居屋のおじさんに胡散臭く思われながらも、子どもたちに混じって、りっぱな紳士が街頭紙芝居を見続けるなんて、想像しただけでもおかしいですよね。そう考えると、倉橋惣三も相当変わった人です。でも、それだけ子どもに魅せられていたのだと思います。

 

 絵本は自分一人で読んでももちろん楽しいですが、子どもといっしょに読み合うと、その楽しさが倍増します。作品を通して子どもの心と共振し合うからでしょうか。子どもたちといっしょに絵本の世界を楽しんでみませんか。

 
 

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佐々木 由美子(Yumiko Sasaki)
プロフィール
白百合女子大学大学院博士課程単位取得満期退学。子どもという存在と子ども独自の世界に惹かれ、子どもの文化・文学を中心に研究。主著書に『子どもの本と<食>』『保育者のための児童文化』など。