第93回 ICTアクセシビリティ

投稿者:杉本 雅彦

 ICT の発展により、情報はますます早く廉価に入手できるようになってきています。しかし、高齢者や障がい者の多くは、情報通信機器を使いこなすことが困難な状況にあり、社会的に大きな問題となっています。とくに視覚や聴覚の障がいは、情報の利用に深刻な困難をもたらす情報障がいともいえます。
 1995年に発売されたWindows95は急速に普及し、DOSに取って代わって主要OSになりました。DOSはパソコンに作業させるため、キーボードから命令文(コマンド)を入力しておこないました。指先の感覚だけを頼りにしてキーを叩くブラインド・タッチにより画面表示がなくても操作ができました。しかし、WindowsではGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を採用しているため、マウスなどの操作が必要となり、画面表示がなければ操作できません。DOSで使っていた視覚障がい者用ソフトなどもWindows上では利用できません。加えて、Windowsが世の中の主流になってしまったために、DOS用のソフトウエアやハードウエアは次第に供給されなくなりました。こうしたことから、視覚障害者のパソコン利用を巡る状況は総体的に悪化してしまいました。
 しかし現在では、視覚障がい者用の情報機器にはさまざまなものがあります。スクリーンリーダとよばれる画面音声化ソフトにより、画面の情報を音声で読み上げることができます。障がいがある人もさまざまな情報にアクセスできるようにするために、日本では日本工業規格(JIS)でその対応をしています。この規格には対象製品による個別規格があり、例えば「情報はいくつかの方法で伝わるようにすること」「画面に文字が出るだけではなく、音声でも伝わるようにする、アラームが音で出るだけではなく、画面でも警告が表示されるようにする、などの配慮をすること」が示されています。
 このようにアクセシビリティにより、情報やサービスを、障がい者や高齢者を含む誰もが不自由なく利用できるようになってきています。アクセシビリティ(accessibility)は近づきやすさ、アクセスしやすさという意味でもあり、多くの人が利用できる場合に「アクセシビリティが高い」といった表現で用られており、使い勝手を表すユーザビリティ(usability)と似た意味でも使われてきています。
 
 

Sugimoto_Masahiko
杉本 雅彦(Masahiko Sugimoto)

プロフィール

専門:ヒューマンインタフェース

略歴:信州大学大学院工学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(工学)。NICT委託研究/ 革新的な三次元映像による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発に従事。