第94回 基礎演習―「わがまち」を探検して、大学生らしい学び方を身につけよう!

投稿者:田澤 佳昭

 モチベーション行動科学部では1年次に基礎演習という必修科目を開講しています。今年度、私が基礎演習を担当することになり、受講生には、大学のある堀切・関屋・牛田・北千住界隈の成り立ちについて考えてもらっています。選挙権をもち、将来、民主主義社会の担い手となっていく若者にとって、自分の身の回りの社会について考え、どのように行動すべきか決めることは大切なことです。そのため、「わがまち」について考えるというテーマは、小学校から高等学校までの社会科の授業でも定番になっています。また、どのようなビジネスが、どのような時期・背景で、どのように発展・衰退していったかを知ることは、就職活動時の業界研究にも欠かせません。基礎演習は、このような身近なテーマで、大学での学びの基本スタイルを身につけられるようにと考えられています。
 授業の準備をするために、私自身、現代の国土地理院発行の地図の他、江戸時代の伊能忠敬が描いた『江戸府内図』、江戸時代の観光ガイドブックである『江戸名所図会』を頼りに、大学周辺を歩き回って想像を膨らませてみました。『江戸名所図会』は、現在の東京未来大学周辺をパノラマ図に描き、田園風景の美しい景勝地として紹介しているのですが、現在の道路や施設を図に当てはめてみると、伊能図に劣らぬほど正確な図であることに驚かされます(付図)。
 大学の正門脇の路地から牛田薬師とも呼ばれる西光院につづく小道は江戸時代から存在していたようですね。さらに注意深く見ると、大学前の通り沿いには用水路も描かれています。この用水路は、現在、見当たりませんが、マンホール下の下水道として残されていると推測できます(写真)。また、墨堤通りは、その名の通り堤防であったことが、図からも分かりますが、現在のルートとは違うところも見られますね。これは、駅付近の人通りを避けて新たに自動車道が整備されたことや、鉄橋化された綾瀬橋が新たにつくられたことによるものでしょう。《空想》とは異なり、《根拠の伴う想像》は「仮説」を生みます。どんどん「仮説」を膨らませ、あとから実際に検証していきましょう。江戸時代と現代では景色は大きく変わってしまっていますが、江戸の小道を思い浮かべながら付近を散策してみるのも楽しいものですよ。自分なりの楽しみを見つけながら学ぶというのも、大学生の学びには大切ですね。
 
 
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図:『江戸名所図会』に描かれた「牛田・薬師堂・関屋里/関屋天満宮」(現在の東京未来大学周辺)
出所:松濤軒斎藤長秋[著]・長谷川雪旦[画](1834-1836)『江戸名所図會』7巻,19冊,27~28葉(国立国家図書館デジタルコレクション[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2563398?tocOpened=1])。東京未来大学は赤色の区画に建てられています。現在の地名・施設名を青字で記し、大通り(墨堤通り)を桃色、旧道となった道を橙色、西光院に至る小道を黄色、大学前の通り沿いの水路を水色で塗分けしてあります。
 
 
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写真:東京未来大学前の通りにあったと考えられる水路(想像図)
2019年7月10日撮影。歩道部分(水色)のマンホール下に江戸時代の用水路が眠っているようです。
 
 

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田澤 佳昭(Yoshiaki Tazawa)
プロフィール
専門:国際政治
略歴:日本大学大学院博士後期課程政治学専攻満期退学。道都大学短期大学部専任講師・同経営学部専任講師・准教授を経て現在。南シナ海・東シナ海の沖合無人島嶼・海洋境界をめぐる国際問題を研究。