第96回 あたたかい飲み物はいかが?

投稿者:埴田 健司

 令和という新しい時代が始まったのが半年前。時間が経つのは早いもので、今年も残り2ヶ月ちょっとになりました。この時期にしては今年はあたたかい日が多いのでしょうが、朝夕に肌寒く感じる日も増えてきたように思います。寒くなってくるとあたたかい飲み物が手放せなくなりますよね。研究室に着くとお湯を沸かしてコーヒーをいれる、というのが私の日課です。特に真冬の時期は、あたたかいコーヒーが身も心もあたためてくれる気がします。
 でもこれ、どうやら気がするだけではないということが心理学の実験で示されています。実験はローレンス・E・ウィリアムズとジョン・A・バージが実施したもので、その研究成果は2008年に科学雑誌の『Science』に掲載されました。実験の手順と結果を見てみましょう。
 実験には全部で41人の大学生が参加しました。まず、集合場所で実験実施者と待ち合わせて、実験室に移動します。移動中、実験実施者から「メモをとりたいので飲み物を持っていてくれませんか」とお願いされます。このとき渡されたのはホットコーヒーかアイスコーヒーのどちらかでした。実験室に到着した後には、ある人物(Aさんとします)の紹介文を渡して、印象を答えてもらいました。その結果、移動中にホットコーヒーを持ってもらった場合のほうが、アイスコーヒーを持ってもらった場合に比べ、「Aさんはあたたかい人だ」という印象が抱かれていました。
 にわかには信じられないかもしれません。もちろん、劇的な印象の違いがあったというほどではありません。しかし、この実験の結果は、身体で感じたあたたかさが人に対して感じるあたたかさにつながっていることを物語っています。身をあたためて、さらには心もあたためてくれる。あたたかいコーヒーにはこんな効果もあるようです。
 さて、今日もコーヒーをいれて仕事スタートです。あなたもいかがでしょうか。コーヒーが苦手なら、別のあたたかい飲み物でもいいですよ!
 

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埴田 健司(Kenji Hanita)

プロフィール

専門:社会心理学
略歴:一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。追手門学院大学心理学部特任助教を経て現職。著書(共著)は『エピソードでわかる社会心理学』、『とても基本的な学習心理学』他。