第97回 奄美大島フィールドワーク

投稿者:森下 一成

 先日、奄美大島でのフィールドワークに行ってきました。公共空間のマネジメント(経営)を専門とする私の研究室ではフィールドワークを調査・研究の手法として大切にしています。事前に文献調査をみっちりやって、対象とする地域がわかったつもりになって現地に入ってみても、やはり現地でしか得られぬさまざまな情報があります。だからこそ、教室や研究室を飛び出して、フィールドワークを行う価値があるのです。
 奄美大島はかつての琉球王国の支配領域であり、沖縄本島では戦後の米軍支配から現在に至る過程で失われてしまった、古い琉球の文化の影響が残っています。首里を中心とする琉球王国の時代、首里から遠い奄美大島はかなりひどい扱いを受けてきたのですが。
 その後、薩摩藩による琉球王国への侵略があり、奄美大島は薩摩藩の直轄地の扱いを受け、今度は薩摩藩の辺境となった奄美大島はやはりひどい扱いを受けますが、奄美大島の人びとは古琉球の文化に薩摩藩の文化を接ぎ木し、奄美大島ならでの文化をたくましく創りあげてきました。その1つが公共空間における土俵の存在なのです。
 古琉球における集落の特徴の1つに琉球固有信仰に基づく祭祀施設を公共空間に置くことが挙げられます。これは奄美大島にもあります。しかし、奄美大島と沖縄本島のそれが決定的に異なるのは土俵の存在の有無で、薩摩藩による支配を受けた奄美大島は神事としての相撲を行うための土俵をこの公共空間に設けるようになっていきます。沖縄本島でも神事として相撲が行われることがありますが、伝統的な琉球相撲は土俵を必要としません。薩摩藩による支配を受けた奄美大島では、いつしか琉球相撲ではなく、私たちがいま国技館で見るような土俵を要する相撲を自らの文化に入れ、集落に1つは土俵があるような独特の文化を築き上げてきました。それゆえに、奄美大島は日本一土俵が多い島ともいわれ、相撲がさかんに行われています。実は奄美大島出身の力士がとても多いって、皆さん知っていました?
 

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森下 一成(Kazunari Morishita)
プロフィール
専門:公共空間論、まちづくり
略歴:早稲田大学大学院政治学研究科・理工学研究科修了後、琉球大学大学院理工学研究科修了(博士・工学)。学生にまちづくりを経験させてキャリア開発を促す指導に注力している。