第98回 卒業論文とストレス

2019年12月13日 投稿者:山極 和佳

 師走に入り、季節もすっかり冬らしくなってきました。クリスマスや冬休み、お正月といった多くのイベントが近づく今月ですが、東京未来大学の4年生にとって何より大きなものは卒業論文の提出でしょう。私の研究室でも4年生が「卒論(卒業論文)がストレスです!」と言い(叫び?)ながら取り組んでいます。
 
 ところで、この「ストレス」ってどのようなものでしょう。
 ストレスは、「対人関係のストレス」や「身近な人を失ったストレス」のように、心理社会的な原因によって生じるものに使われることが多いですが、その他にも、物理的(寒冷・騒音など)、化学的(飢餓・薬物など)、生物的(細菌・花粉など)といった様々な種類の原因によって生じるものです。
 その中の心理社会的ストレスに関して、Holmes,T&Rahe,R(1967)は、ストレスによる心身の病気の発病を予測するために、「社会再適応評価尺度」という尺度を作成しています。この尺度は、様々なライフイベンツ(人生上の出来事)とそれらによるストレスの強さを一覧にしたものです。様々なライフイベンツ(とストレスの強さ)とは、例えば「配偶者の死」というライフイベンツのストレスの強さは100点と最大であり、その他に「けがや病気(53点)」、「学校を変わる(20点)」などがあげられます。
 この尺度について少し前の授業で説明したところ、ある質問がありました。
 「私は何度も転校(学校を変わる)したけれど、病気にならなかったです。」
 はい、この質問のように、ライフイベントが誰にも同じく影響を与えるわけではないことを、Lazarus,R.,&Folkman,S.(1984)は「認知的ストレス理論」としてまとめています。この理論では、同じライフイベンツであってもその影響は個人差があり、それをどのように受け止めるかによって影響が異なる、つまり、病気になる人もいればならない人もいるとされています。そのため、心身の不調などのストレス反応を生じやすい人への心理学的支援(カウンセリングや心理療法)では、ストレスの原因となるストレッサーに対する受け止め方や対処方法を変えていくという援助も行われています。
 
 卒業論文は大学4年間の集大成ですので、4年生にとって「ストレス」ではあると思いますが、その分終わった時の達成感も大きなものでしょう。あと一息、最後の仕上げに励んで下さいね。
 
引用文献
Holmes,T.H.,&Rahe,R.H.(1967). The Social read-justment rating scale. Journal of Psychosomatic Research,11,213-218.
Lazarus,R,S.,&Folkman,S.(1984).Stress,appraisal,and coping.
 

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山極 和佳(Waka Yamagiwa)
プロフィール
専門:臨床心理学
略歴:早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程満期退学。早稲田大学人間科学部助手、東京福祉大学社会福祉学部講師、東京未来大学こども心理学部講師を経て現職。博士(人間科学)。臨床心理士。