第110回 非言語コミュニケーションと日本文化

2020年12月4日 投稿者:田中 真奈美

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人と直接会う機会がかなり減少しています。オンラインでの交流が進むようになり、顔を見て話す機会は増えていますが、直接会うことと比較すると、色々と違いがあります。一番の違いは、非言語コミュニケーションが少ないことではないでしょうか。オンラインでも相手の顔を見ることができるので、相槌や表情、ジェスチャーなどを見ることはできます。でも、全身を見ることができないので、限界はあります。非言語コミュニケーションには、服装、相手との距離、香り、場の雰囲気も大切な要素です。これらのことは、オンラインでは感じ取ることは難しいですね。また、会話の切れ目や間を取ることも難しいのではないでしょうか。

 とはいえ、SNSやメールでのやり取りよりは、オンラインで顔を見て話す方がいいと感じている人も多いと思います。Watzlawickは、One cannot not communicate. (人はコミュニケーションせずにはいられない)と言っています。人は、誰かとつながっていること、コミュニケーションすることが必要なんですね。そういう必要性から、オンラインでの交流も広まってきたのかもしれませんね。

 コロナ禍で私がもう一つ考えたことは、日本文化の無言の表現です。能では、ほんの少し顔を動かすことで、悲しみや喜びを表します。私は、表千家の教授でもあるのですが、茶道でも無言の挨拶がたくさんあります。客が次の客に対して、「お先にお茶をいただきます」との意味を込めてのお辞儀、亭主に対してのお礼のお辞儀などがあります。飛沫感染防止のため、挨拶の代わりに会釈をしてみようと思いました。でも、これが難しいのです。ついつい「こんにちは」といつもの習慣で、声が出てしまいます。また、マスクをしているので、目だけで表情を作ることが難しいことにも気が付きました。しかし、せっかくの機会と考え、美しい会釈ができるようになりたいと思い、挑戦しています。顔が見えないので、会釈の前に微笑んで視線を合わせ、心持ちゆっくりと会釈をするようにしています。皆さんもぜひ挑戦してみませんか。

 

参考文献 「はじめて学ぶ異文化コミュニケーション」石井敏 他 有斐閣選書

 

田中 真奈美(TANAKA Manami)

プロフィール

専門:国際多文化教育学
略歴:サンフランシスコ大学教育学部博士課程修了。教育学博士。サンフランシスコの保育所、小学校、高校、大学で教育経験を積む。研究領域は異文化適応の諸問題で、海外長期滞在者について研究している 。