第112回 「もうひとつの渋谷」で起こる消費活動

2021年1月22日 投稿者:三浦 卓己

 みなさんは、「バーチャル渋谷」をご存じでしょうか。これは、2020年5月にKDDI株式会社が旗振り役となり、渋谷区の公認を受けて、非営利団体や企業50社が参画して始まった、「渋谷5Gエンターテイメント」です。具体的には、デジタルを活用したVR(virtual reality)仮想街によって、「もうひとつの渋谷」をつくるというものです。バーチャル渋谷は、クリエーターやアーティストを支援し、渋谷区の掲げる「創造文化都市」の実現を目指しています。ここでは、ミラーワールドで新たなビジネスの展開を試みています。ミラーワールドとは、実体のある空間と仮想空間を融合して体験価値を提供する世界です。たとえば、バーチャルストアといわれる店舗では、デジタル空間でアバターというキャラクターに扮した販売員が、現実にある商品をリアルタイムで言語説明し、消費者は、その商品を実際に購入することができるというものです。これは、コロナ禍においても、人の移動を伴わずに消費活動が行える有効な商取引のひとつです。

 昨年8月に、このプロジェクトに参画している大日本印刷株式会社コンテンツコミュニケーション本部の方にお話を伺いました。面談は、ZOOMというオンライン・ツールです。

特に印象的だったのは、バーチャルストアはアバターの世界なので、障碍者やLGBT、年齢による偏見や制限がないということです。たとえば、定年後20年という高齢者や、強面の男性がアイドル姿、セクシーボイスで接客することも可能です。このアバターを介したコミュニケーションは、外見による偏見をなくし、これまで制限されてきた雇用の機会を広げることにも繋がります。また、現実の世界であれば苦情になるような強引なコミュニケーションでも、アイドル姿、セクシーボイスのアバターの販売であれば、苦情にならない効果もあるそうです。一方で、ここでは割愛しますが多くの課題もあります。しかし、このコロナ禍においても企業や行政は連携し合い、新たな市場を創造しようと懸命に取り組んでいます。バーチャル渋谷はプラットフォームです。今後どのような世界が構築できるのか、多様な参画者を募りながら、そして、消費者の反応をみながら変化適応していくことでしょう。 

 デジタル空間、5G 、オンライン・ツールの活用と情報技術は日進月歩です。わたしたち消費者は、これら外部環境の影響を受けながら購買意図や行動は変容します。しかし、どんなに情報化社会になろうとも、人間は本来アナログです。最新の情報技術を使うことが目的なのではなく、個人の課題や社会の課題を解決するためのひとつの手段が情報技術です。企業のみならず、わたしたち消費者においても、目的と手段が逆転しないよう意識しながら、より良い未来を創造していきたいものです。

 昨年に続き、社会における喫緊の課題は未だ解決していませんが、2021年、希望しかありません。

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三浦 卓己(MIURA Takumi)

プロフィール

専門:マーケティング、消費者行動

略歴:法政大学大学院経営学研究科経営学専攻マーケティングコース修了。国内外金融機関、地方創生を目的とする事業会社を経て教員に転身。東京未来大学非常勤講師を経て現職。