第20回 「よく学び、よく遊び、そして、よく活かせ」

投稿者:磯 友輝子

みなさんにとって大学生活のイメージはどのようなものでしょうか。
「学生の本分は学業」
「受験が終わって晴れて大学生になったのだから、とにかく遊ぶ」
「長い休みにはアルバイト三昧」
などなど、大学生の生活にはさまざまイメージがあるかと思います。

 

つまり、よく学び、よく遊び、よく働く。
これらは私が高校生の時に抱いていた大学生のイメージです。
では、自分の実際の大学生活はどうだったか。
予想していた以上に、よく学び、よく遊び、よく働きました。

 

まず、どのようによく学んだか。

 

高校時代は決して勉強が得意なほうでも、好きなほうでもありませんでした。なぜなら勉強の仕方がわからなかったのです。しかし、大学に入学してあっという間に4月、5月が過ぎ、そろそろ夏の定期試験を意識したころ、生まれて初めて自分に適した学びの方法を知り、学ぶことがどんどん楽しくなりました。そのきっかけとなったのは友人たちとの勉強会です。勉強会といっても仰々しいものではなく、仲の良い友人同士で、空き時間、空き教室に集まって雑談をしながらわからないところを補うという程度のものです。

 

自分がわからないところを教えてもらう際には、何がどのように分からないかを「教えてくれる人にわかってもらえるように伝える。友人がわからないところを教えるときには、「どうしたらわかってもらえるかを意識して説明する。つまり、友人との学びとおして「他者を意識すること」を学んだのです。

 

そのうち、「他者を意識すること」は「自分の理解状況を客観的に把握すること」(何を学び、どのぐらいまで理解しているか、など)へと変わり、効率よく学ぶことができるようになっていきました。これは心理学で「メタ学習」といわれる方法です(その当時はそのような用語は知りませんでしたが)。たいていは、もっと早い段階で身についているべき学習方法なのでしょうが、私は遅ればせながら大学生になって身につけました。

 

さらに、大学での学びは、高校までの基礎的学習をもとにして、実際的で具体的、応用的な知識の獲得を目指します。私が学んだ国際文化や心理学の学問は、特に日常生活に密接に関連した事象を多く扱っていました。そこで、友人との学びでは、「今学んでいることがどのような点で身の回りの出来事の何と結びつき、どのように活かされるのか」を具体的に考えるように努めました。すると、それまでバラバラに蓄積されていた知識に共通項がみつかり、それらを関連づけて頭に取り込めるようになりました。これは心理学の「体制化」という方法です(もちろん、その当時はそのような用語は知りません)。

 

では、どのように遊んだか。

 

友人と語る、議論する。時にはお酒を片手に夜中まで。時には瞼が閉じるまで。
友人のこと、恋愛、将来のこと、世の中のことなど何でも「自分がどう思っているのか」を語るのです。当然、自分が語るだけではなく、友人の語りにも耳を傾けます。友人の考えが自分とは異なり、腑に落ちないこともあります。口論にもなります。そのようなときには互いに共通点を見出そうとしたり、あるいは違いを明確にして受け入れることに努めました。
こうやって獲得されたものが「主張」と「傾聴の姿勢」であり、友人との「信頼関係」であるように思います。

 

さて、どのように働いたか。

 

私は、たくさんの種類のアルバイトをしました。家庭教師から、飲食店での接客業、さらにはマネキンといわれる宣伝・販売促進の販売員まで。良い成績を上げ、店舗から派遣元に指名が来ることも度々ありました。
アルバイトには、大学での学びと遊びの効果が反映されていたように思います。メタ学習や体制化を活かして家庭教師として教え、お客様に効果的に伝達し、お客様の声にも耳を傾けました。客観的に商品を見つめ、自分の言葉で語りかけることにも努めました。

 

つまり、私にとって、大学生として「よく働く」ことは「よく学び、よく遊ぶ」ことを「よく活かす」場だったのです。

 

大学生活では、学ぶことも、遊ぶことも、働くことも、すべてが楽しく、毎日を充実させてくれるものでした。そして、学び、遊び、働くことから、「他者」の立場や考えを意識して人と関わり、コミュニケーションをすることの大切さを学んだように思っています。
そして今、自らが学んだコミュニケーションの大切さを、大学の教員として皆さんに伝える仕事に活かしています。

 

磯友輝子
磯 友輝子 (Yukiko Iso)
プロフィール
大阪大学大学院人間科学研究科助手を経て現職。専門は対人社会心理学。特に対人関係に見られるしぐさや対人関係を良好にするためのスキルに興味を持って研究。趣味の人間観察は研究にも役立っています。共著に「暮らしの中の社会心理学」「幸福を目指す対人社会心理学―対人コミュニケーションと対人関係の科学―」など。