第66回 「カウンセラー」という仕事
2017年5月12日 投稿者:山極 和佳
みなさんは、カウンセラーの仕事とはどのようなものだと思いますか?
多くの人があげるのは、「悩みや問題を抱えた人の相談にのること」だと思います。
しかし、実際のカウンセラーの仕事はそれだけではありません。ここでは一つの例として、「コンサルテーション」という活動を紹介したいと思います。
コンサルテーションとは、「ある専門家(コンサルタント)が、もう一人の専門家(コンサルティ)の関わっているクライエントの、精神衛生に関係した特定の問題をコンサルティの仕事の中でより効果的に解決できるように援助する関係」のこととされています。
少しわかりにくいので、スクールカウンセリングでの例をあげましょう。
たとえば、友達とのコミュニケーションが苦手で、学校を休みがちな生徒がいたとします。担任の先生は、この生徒が学校生活を円滑に過ごせるよう教育・指導したいと思うのだけれど、「コミュニケーションが苦手」という心理学的な(精神衛生に関係した特定の)問題にどのように対応したらいいのか困っています。
この場合、上に書いた「コンサルテーション」の説明のうち、「クライエント」とは学校を休みがちな生徒であり、「もう一人の専門家(コンサルティ)」とは担任の先生になります。そして、コンサルタントであるスクールカウンセラーは、担任の先生(コンサルティ)と話し合い、担任の先生が、生徒が抱える悩みや問題への理解をより深め、教育・指導できるかについて援助する・・・この活動がコンサルテーションです。
多くのみなさんが持っているカウンセラーの仕事のイメージは、この例の中では、「生徒の相談にのる」ではないでしょうか。しかし、カウンセラーの仕事には、悩みを抱えた人を(直接)援助するだけではなく、悩みを抱えた人に「関わる人を援助する」ことも含まれるのです。
ゴールデンウィークも終わり、大学では、4年生が就職活動の真っただ中、3年生も少しずつ活動を開始しています。そのような状況の中、“就活生”(就職活動中の学生)が、「就職活動をして、世の中には今まで自分が知らなかった仕事がたくさんあるのだなと思った」と言っていました。本当にそのとおりだと思います。そして、上で紹介したカウンセラーのお話のように、知っているつもりの仕事でも、(多くの人が知らない)別の側面もあるのだろうと思います。
これを読んでいる高校生のみなさんは、希望の大学を選ぶにあたり、自分が将来どのような職業に就こうかを考えていることと思います。関心のある職業について、本などで調べたり、実際にその職業に就いている人から話を聞いたり、職業体験やボランティアで体験したりと、さまざまな方法を使い、なるべく広い視点で考えてほしいなと思っています。